短・中編置き場

□ハピィとプリン
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国のお偉いさんが集まった正式らしい結婚式を挙げ終わり、その後日には無人島でアイと俺だけの誓いを立てて3泊半サバイバルの別荘暮らし。
とても楽しかったし、アイとの絆を深められた気がする。

そんな結婚式後の3日後くらいの朝。

「ハピィに護衛が必要だの」
「ごえい?」
「ハピィを最優先に守る者だ」
「ふーん。でも、剣と魔法の杖が有れば俺は強い。守られる必要無い」
「普段は持たぬだろう。それに、結婚式で全国にハピィは我の嫁だと知れ渡たり、ハピィを殺そうとする輩が現れる」
「ほお。返り討ちしがいが有りそうだな」
「ウズウズソワソワするでない!ハピィは戦わなくて良いのだ!」
「えーーーー!」
「ハピィは護られる側であるのだぞ。だから、護衛は必要である!で、こやつが護衛の候補だ」

ごえいは決まっているのかよ。
と、不満を持ったが、アイがマントから出したのは気絶していた人だった。

さすがの俺もギョッと驚かされる。

「アイ、コイツで大丈夫なのか?色白だし、髪は白に近い灰色。全体的に弱そうなんだけど」
「森の大狼が拾ってきた」
「はぁ?!」
「調べてみれば、こやつは訳ありだぞ」
「わけあり?なんの?」
「誰かが封じておるみたいでな、こやつの記憶が読めん。それと、もう一つ変な術を掛けられておる様でな……発動条件は不明。我が解くにも時間を要する」
「……つまりは?」
「護衛候補と言ったがこやつの保護と監視だ。期間は記憶が戻るか、こやつの迎えに誰かが来るまでかの」

なるほど。
もし、誰も迎えが来なくて記憶が無いままでも、ごえいとして働いていられる。
俺並に強くなれたらの話だけどな。

「ごえいに向かなかったらどうするんだ?」
「その時は人間塔に放り込んで庭師かシェフの弟子入りをさせようかの」

初めから弟子入りをさせた方が良いんじゃないかと思ったがアイに考えが有るんだろう。
俺は言わない事にした。

「ハピィ、こやつを見ててくれるか?」
「いいよ。起きたらアイに知らせればいいんだろ」
「うむ。頼むぞ。我は書斎で仕事をしておるからの」
「わかった」

アイから白い人を受け取ると想像以上に軽かった。
身長は俺と同じくらいなのに超軽い。
メグミには悪が、メグミよりとても軽い。
こいつ、骨と皮だけか?!と、思わせる程、とにかく軽かった。

衝撃を受けた数秒後、俺の部屋で寝かせるべく部屋に向かった。
こいつが寝てる間は何しようかな、と考えながら。

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.
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白い人が目覚めてベッドからゆっくりと上半身を起こしたのは夕方だった。

「……?」
「よお、起きたか。たっぷり眠っていたな」
「……だ、れ?」
「俺はハピネス。お前は?」
「…………ここは、どこ?」
「魔王城の俺の部屋」
「…………広い」
「そうだな。俺の部屋は広い。で、お前の名前は?何処から来た?」
「……女の、人?」
「俺は男だ。オカマでもない。フリフリの服はアイの趣味であって俺じゃない。俺は変態じゃない。で、お前の名前は?」
「とれ、なぁに?」
「おやつに出てたプリンだ。お前の分に残しておいたのに全然起きないし、もうすぐ夕飯だから俺が食ってる。お前の名前は?」
「甘い、匂い、美味ちとぅ」
「なーまーえーは?!」
「つこち、だけ、くだたい」
「なーまーえー!!!ワッチャーネーム?!!!」
「つこち、だけ」
「あーもー!食べかけで良ければどーぞ!!」

ズイッと渡したから白い人の顔の周りにパァと花を沢山咲かせた幻覚が見えた。
目を輝かせてプリンを見て匂ってすくって食べる。
わー、凄く美味しいって顔に書いてる。
目、キラッキラッ。丁寧にゆっくりと食べてる。
初対面の食いかけを食べる精神を疑いたい。

……よく見るとキラキラに光ってる瞳は金色。
金の瞳は珍しい。人間で金の瞳は神子しか見た事が無い。

「アイを呼んでくる。ゆっくり食べておけよ。それと、この部屋から出るなよ」

白い人はプリンに夢中になっているのか返事は無いし首さえ振らない。
戻ってきて部屋から消えてたら話を聞いてなかった白いコイツが悪いからな。

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アイを連れてきたんだが、白い人は俺を見た後アイを見るとビクンと体を跳ねさせて涙目になるとプリンを持ったままベッドから落ちて震えたまま俺の元に来て隠れた。

プリンを零さずに来たのは褒めてやるが俺を盾にするなよ。

「怖がられてるな」
「我の見た目にか?魔力にか?」
「両方じゃないか?」

白い人はプリンを両手でしっかり掴んでいても体を震わせている。
あ、1口食べた。
怖いよりも食い気か。

「取り敢えずベッドに戻れ。それとプリンは後だ」
「っ、やっ、プリン、やっ」
「アイと話したら続き食っていいから。少し我慢だ」
「あ、ぅ、」

プリンを取り上げたら顔をキョロキョロさせて俺にキューっと抱きついた。
あー、震えが伝わる。すげぇ伝わる。
けど、力が弱いから振り払える。
振り払おうとしたらアイに肩を叩かれた。

「そのままにしてやれ。怖い気持ちを少しでも和らげたいのだろう。さぁ、ベッドに座って話を聞こうかの」
「……そうだな」

白い人をくっつけたままベッドに向かって座った。
座っても白い人は俺にくっついたままだ。
布団に潜って隠れようとしないだけマシだと思うとしよう。


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