暮古月番外編

□中澤伸哉の独白
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俺の視界に毎日入ってくる仲良し3人組がいる。

生徒会長の紫藤桜萪(シドウオウカ)、その幼馴染の宮城桔梗(ミヤシロキキョウ)は生徒会書記。そしてその執事兼許婚の東宮咲真(トウグウサクマ)役職なし。

紫藤と宮城が並び三歩後ろから見守る東宮の図。
学園でもこの三人は有名で三人でないところを見たことが無いとか言われてる。

一応俺は会長の許婚で有るがあの輪に入ろうと思わない。
俺は色んな女の子と遊んでる方が楽しいしあんな奴らと同系に思われたくないし学園を卒業したら嫌でも紫藤と居ないといけないし学生の期間は自由にしていたい。
紫藤もこんな俺に文句言わねぇし容認してる。

文句を言ってくるのは宮城だ。
2日に一回は言ってくる。桜萪の許婚の自覚が有るのか、桜萪が可哀相、女遊び止めて、桜萪は平気な顔してるけど本当は傷ついてるんだから、最低、不謹慎、性病うつすな、こっち見るな近寄るな崖から落ちて死ね…明らか殺意が篭められている。

俺に殺意を篭めて言うのは宮城が紫藤を好いているからだ。わかってる。
その好きが幼馴染だからではなく恋愛の意味である事も。
紫藤は恋愛感情が疎い為、気づいていない。
宮城も伝える様子が無い。今の状態が良いんだろう。

文句を言った後、宮城が去り姿が見えなくなったら東宮がやってくる。
お嬢様が迷惑をかけて申し訳ありません。ごめんなさい。許して下さい。と、毎回宮城の代わりに謝罪をしてくる。気にしてないと言ってもしつこく謝罪文を述べるだけ。
ムカつくから宮城を抱く。そう言ったら東宮は顔を青くさせてそれだけは止めてください。何でもしますから。と言う。

東宮は許婚とか関係無しに宮城を好いている。
宮城はただの執事にしか見ていないというのに健気に一途に思って純粋だ。
宮城より心が綺麗だと思う。

東宮が女だったら良いのに。
宮城と比べる所為でそう思うようになった。

東宮が女だったら俺好みだろうしあの純粋をグチャグチャに壊したい。

俺の頭も相当イカレだした時に謝罪してくる東宮に謝礼と称してキスをした。
キスしたがやっぱり男。女にならない。けれど少しだけ満足。
固まってしまった東宮を見ると女じゃなくて本当に残念に思う。

その日の放課後、宮城に礼拝堂に呼ばれた。
また何時もの文句を浴びせるんだろう。飽きず諦めずよくやるな。
呼ばれて出向く俺も俺だが。

けれど今回は違った。

「私から桜萪ちゃんだけじゃなくてさくちゃんも盗るの?」


見られてたのか。
宮城は東宮に俺と会うなと命じるってさ。俺から東宮に会うなと二重の意味。
嫌なこった。面倒くせぇ。
もう用が無ければ帰る。
そう言って踵を返したらタックルされて踏ん張れなかった俺はそのまま倒れた。
何しやがるこの女、ぶっ殺す。
立ち上がろうとする前に宮城が俺に跨って短刀を向ける。
殺されるもんかと手首を掴んで押し返すと簡単に退かせた。
女の力は弱い。


「今回は見逃してやる、二度とその面を見せるな」
「嫌だ、桜萪ちゃんもさくちゃんも、渡さない!」


宮城は俺の腰に手を回して離さない。
しつこい余り腹を蹴った。
離れて蹲ったからもう動けないだろう。
親に言っても俺の家の方が権力あるし問題ない。
今度こそ帰るつもりだった。

女の執念ってやつかな。
宮城は俺を心底憎んでた。
俺が思っていた以上に。

ドンって背中に衝撃があって、腹から何か滴る感じがした。
後ろを見たら宮城が血まみれの短刀を持っていて俺の制服は血が滲んでいた。
あーあ、やっちゃたな。
視界が霞んで俺は倒れた。
宮城は立ったまま動く気配がしない。
俺、大量出血で死ぬかもな。

礼拝堂の扉が開かれ聞こえてきた声は紫藤の悲鳴と人殺し、来ないで!という声。
俺まだ死んでないし。幼馴染にそれは無いだろう。
霞む視界に宮城が違うと言って紫藤に近づく姿。
紫藤は腰を抜かしたのか自分の足にとられたのか解らないがゴッと鈍い音を立てて倒れた。
鈍臭く馬鹿な女。

足音が聞こえた。
多分、東宮だろう。

女は短刀で自分の首を切った。
自滅した馬鹿な女。

結局宮城はショックと出血多量で亡くなり紫藤は打ち所が悪く亡くなった。
そして東宮は犯人にされ首を吊って自殺。

仲良し3人組は死ぬ時も命日が近く仲良しこよし。

俺、中澤伸哉は退院して車で家に向かう途中事故に合って即死した。


-End-
(12.08.22)


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