暮古月番外編

□杜若と椿
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男だらけのむさく熱苦しい学園でよく生きていられるなと我ながら思う。
しかも前後左右のクラスメイトは恋人持ち。
俗に言うリア充。しかし相手は男だ。
何故男なんだ。どうやって発展したんだ。ときめいた?解せぬ。
男の何処が良いのか俺には一生理解出来ないと言い切りたい。

俺の名前は村埼杜若。”かきつばた”ではなく”もりわか”読みをする。
どんだけ”むらさき”な名前なんだと親に文句を言ったら


「誕生花だし奇跡としかははは面白かったからははははは!」


ふざけるな。

両親が腐った者同士で面白がってこの学園に中等部から放り込まれた俺。
男しか居ない俺からしたら地獄の監獄に耐えて現在高等部2年と3ヶ月。
卒業したら絶対に両親から離れてやる。

あぁ、早く卒業したい。


「おはよーお前ら席につけー」


今日も変わらず1日が始まる。


「転入生を紹介すっぞー」


転入生だと?!
これは電話で親が言っていた王道の展開?!
何時もなら寝る体勢に入る俺だがどんな奴なのか気になって扉をじっと見ていた。

親の言うモジャモジャ髪の瓶底眼鏡かバレバレ変装少年か敬語が出来ない裏口か実は美形族長学園の台風の目になり得る男子どれだ?!
どれかに当て嵌ったらザワついている教室から抜け出してトイレに行って大笑いしに行ってやらぁあ!


「むしゃ、ゴリゴリ、んぐ…丸井椿。ヨロシク。モググ、ググ」

「丸井は星永の後ろなー」


転入生、丸井が入ってきた教室は静まり返って全員丸井をガン見していたと思う。
ある奴は予想外で絶句。期待外れで絶望して絶句。現実逃避したくて絶句。こんな奴が……絶句。
初めてクラスが絶句で一つになるとは思わなかった。
で、俺は呆気に取られて絶句した。
なんせ丸井は、苗字の通り体型が丸い。
お菓子片手に椿の名が泣く。

デブだった。


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