暮古月番外編

□羽山inワンダーランド2
1ページ/8ページ


さー!次の世界はなんだ!
と、思ったのだが、


「香取ー……」


俺は一人森の中に居た。
一緒に来たはずの香取はこの世界に入ると居なくなっていた。また魔女が出てくる話しだからその役に回っているのかもしれない。

森の中をグルグル歩き進むが何処見ても同じ風景にか見えない。
俺、生きて帰れるのか?此処で野垂れ死にたくないぞ。


「おーい香取ー!香取ー!」


声を上げても返事はない。代わりにカラスがカァカァ鳴いて羽ばたく度に驚かされる。
恐いよー。1人で居るのは心細いよー。泣きたいよー。

がむしゃらに歩き進めると人の声が聞こえてきた。
誰か居るのか?村人?それとも……幽霊?

1人よりはマシだ!と思って声のする方へ向かった。

そして森を抜け出た先に有ったのは高い塔。
そして高い塔の窓から垂れた長く美しい髪。窓には外を眺めながら歌う……


「か、会計様?!」


咄嗟に出た声に気づいたのか歌声は止み会計様らしき人は此方を見た。


「へぇ、意気の良さそうな平凡じゃねーか。この髪を使って登って俺の相手をしやがれ。丁度身体が鈍ってたからなぁ」


手をゴキゴキ鳴らす会計様、ちょっ、違うくね?!塔の中で格闘ファイトは違うくね?!

「こりゃこりゃ枢!乙女がそんなはしたにゃい事はしてはいけましぇん!」
「ちっ、ババア帰って来やがった」


って、ババアって香取かよ!


「君は村へ帰りにゃさい」
「えぇ?!」


村って何処だよ?!
と言おうとしたら香取が「向こうに小屋があるから其処へ」と耳打ちしてくれた。
俺は首を縦に振ってその小屋に向かった。

振り向けば香取はあの髪を使って登っていた。あれは……ラプンツェル?げっ、ラプンツェル?!どうやって阻止すんだよ?!あの姫は王子とタイマンするのか?!でも、そっちの方が良いかも。

だって、ラプンツェルは魔女が居ない時に王子を中に入れて何度も性交して妊娠が発覚して髪の毛を切られ追い出され王子は魔女にその事を知らされ塔から身を投げ失明。そして七年後奇跡的に森の中で双子と暮らすラプンツェルと出会いラプンツェルの涙によって王子の視力は回復しみんな城に呼ばれ仲良く暮らしたとさ。って話し。

そう、冒頭の性交だ。
出くわしたくない。まだ修羅場中に出くわした方が良い。

いや、それよりどうやって阻止をする。
香取なら暴くところまで行くだろう、其処からだ、ん?でも男同士だから子供出来ないよな?男が姫の時点で物語りが成立しなくね?


「そにょとーり」
「うぉほ?!か、香取!」
「物語は成立しにゃい。だからスルー出来る物語りだにゃ」
「狼と七匹の子山羊みたいに?」
「そーにゅーこと。でもー」
「でも?」
「枢会計がはにゃまに興味持っちゃった」
「はぁぁぁあ?!」
「いやー、箱入りにょ姫だからーはにゃまみたいなー人間が珍しくってー連れて来いってぇー」
「えぇぇつまり、俺が、王子?」
「それは違うとー思うけどー」
「一回会ってとんずらしよう」
「さんしぇー」


と、言うことで俺は小屋を出て会計様の元へフルボッコされる覚悟で行きました。

けど、実際に会ったらフルボッコどころか何やら違うようで。


「相談、に乗って欲しい」
「相談?何でしょうか?」
「あーと、えーと、その……」


何だ?外はどんなのとか、あの鳥は何とか空に浮いている白いアレは何?とかそんなのか?箱入りで塔から出たことが無いラプンツェルだからそんなのかなぁなんて思っていたが、


「どうやって彼を止めたら良いか、教えて欲しい」
「彼?何を止めるんですか?」


まさかラプンツェルを出すために魔女と王子が対決するとかラプンツェルの為に王子が城から出るとか?


「は、激しいプレイ……身体が、保たなくて」


……………あぁ、喧嘩。殴り合ってるときにキツい技をかけられて耐えれないんだな。


「髪を垂れ流さなければ良いじゃないですか」
「でも、彼から聞く話は面白くて楽しくて好きなんだよ、でも、その後必ずってくらい身体を重ねて……最近エスカレートしてもう穴が」
「シャラーァァァァアープッ!」
「こんなの、同じ服装をした奴にしか相談出来ないと思って、ババアにバレたらどうなるか解らないし」


あーくそ。
此処でも性交してやがった。相手の王子の人物像は解ってる。変態らしい事だよ。


「王子が好きか?」
「……うん、まぁ、ハードなアレが無かったら好き」
「なら、王子と此処を出ろ。そして城で幸せに暮らすんだ」
「出来ない!俺は魔女の魔法で此処から出られないんだ!」
「魔法を切れば良い」
「え?」
「その髪が魔法の源だ。切って逃げれば良い」
「……なぁ、俺の相談の答えは?」
「ハードプレイ云々の前に王子との事がババアにバレて追放される。そして王子とは永遠に会えなくなる」
「そんな!」
「王子を諦めるか此処を出るかだ。此処を出るなら俺は協力する」
「ほ、本当?」
「俺は良い迷子のキューピットなんだぜ?また明日来るよ」


と、話して部屋を出たまでは良いが何が迷子のキューピットなんだよ。クサい台詞であの部屋から出た時恥ずかしさの余りに超悶絶した。自分気持ち悪ぅぅぅう!


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ