暮古月番外編

□羽山友和の不運連鎖
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暮古月学園を卒業した後でOBとして呼ばれたのは初めてで、ただ働きと準に会って懐かしいさを感じた。

そして高等部に入ってからの準の写真は変わっていた。中等部まで灰色の様な寂しく儚い写真ばかりではなくちゃんと人を撮してたし、明るい色が付いたと思える。それと心霊写真が多かったのは気のせいだろうか?

取り敢えず準が良い方向に進んでくれて良かった。ノンケのアイツに同性の恋人が出来るとは思わなかったけど、いや、認めてないけども!


「友和さん」


準は授業で放課後になるまで暇な俺は学校を撮っていたり散歩をしていた。そして聞いた声だと思って振り返ればアイツだった。準の自称恋人の……松崎しげ○?だっけか?違うな、松崎…なんだっけ?授業はどうした?自習か?


「お聞きしたいのですが、いいですか?」
「何だ?」
「ディープキスをすると眠ってしまう準の体質は、貴方が仕込んだ事ですか?」


ぶほぉお!
やばっ、思わず吹いた!マジかよ!準の体質バレたのか!つか、キスされたのかよ!したのかよコイツ……!


「天使の唇に、貴様ァ!」
「しましたとも!恋人の特権!」
「認めねぇ!断じて認めねぇ!」
「はっ、貴方より先に準に恋人が出来たのがそんなに悔しいですか?」


恋人


恋人の話は出して欲しくない。
今の俺の禁句だ。
だって俺は恋人から喧嘩別れをしてこっちに逃げてきたんだ。
あぁ、そうだよ、俺はタイミング良く入ってきた話に飛びついたさ!黙って逃げてきたさ!そして準に会って忘れようとしていた!

思い出しただけでもムカつく!脳内のアイツなんか黒く染まれ!

閑話休題!


「悔しい?俺は準と違ってモテるから恋人なんざ過去に何人も居た」
「今は居ないんですね」
「うっさいな」
「話を戻しますが、貴方が準をあの体質に?」
「……そうだよ」


準が可愛いくて将来恋人が出来たときにあたふたする姿を見たくて。俺に突っかかって文句を言う準の姿を見たくて。その怒った顔にキスしてさらに困らせて、泣かせたくて。

でも、兄弟や師弟としての愛でキスをしたわけでもなくて、ベタにラブコンだから一人の男として意識して貰おうとキスをしたわけでもない。


「安心しろ。俺は準と恋人なんざなりたくない。準は俺の人形で玩具だ」
「なっ?!」
「でも、そろそろ卒業だな。あれは人形、玩具の顔じゃ無くなった。泣き顔は変わらずソソるが……」


準の泣き顔を思い出そうとしたのに思い出したのは喧嘩別れした恋人の台詞。
“泣き顔可愛いです。もっとぐちゃぐちゃに泣かせたい。泣いて下さい”

あーもー何で、何で、何で!
何で俺がっ!


「友和さん俯いてどうしました?時差ボケでも?」
「あーそーだよ、時差ボケだ。続きの言葉を忘れる程眠たいみたいだ。準の恋人だと認めないからな。認めないかーらーなー」
「……なんか、余計な傷を抉った様ですいませんでした。お大事にして下さい」


何故解ったんだよ?!あぁ、お前は余計な傷を抉った!苛々しすぎて頭痛くなってきた。それに本当に眠くなってきた。

奴の顔を見ずに部屋に戻った。


俺は準が嫌い、と言うより怖かったし将来が不安だった。


俺の真似ばかりして、撮れば撮るほど上手くなっていって、でもその写真は何処か寂しくて。準の感性そのまま写真に写る。カメラや写真に対しての熱や執着、才能。

俺より上回りそうで怖かった。
そしてそうさせてたのは俺なんだと気づいてさらに怖くなって準がこのまま成長してしまったらどうなる?不安と罪悪感。

準からポートフォリオを見せられたとき確かにそれは凄かったけど、此処で準をカメラから離さないと駄目だと思い俺は投げ捨てた。

準は流されやすく打たれ弱い。

自信作だったらしいポートフォリオを投げ捨てた時の顔は敢えて見なかった。

準は黙って俺の部屋から出て、それからは知らない。高等部に上がり俺は海外に出たからだ。まぁ、なんとか良い方向へ行ってくれた様だけど。カメラマンを目指すと言われたら直ぐに抜かれそうだが道は険しいと言って諦めさせる。準には悪いが俺はお前より劣りたくないし仕事を減らされたくないからな。


『おにぃちゃん、おにぃちゃん』
『どうした?』
『寒くて、眠れない、から……』
『ははっ、おいで。一緒に寝てあげよう。それとぐっすり眠れるおまじないもしてあげる』


純粋に弟として愛してたのは何時までだった?何時から俺は歪んだかなぁ……。


なんてぼんやり思っていればメールを受信。
開けば


“逃げれたなんて思わないで下さいね。”


の1行メール。

何で着信拒否にしなかったんだろ。
バカだろ自分。
でも家はバレてない。だから携帯は新しく買い換えておこう。そして電話番号、アドレスも変える。GPSで追われてたまるか!それにアイツは海外での仕事で抜けれないだろうし、こっちには来れないはず。


それに、もうアイツの事は忘れて準といたい。今の準はあの時と違うんだ、変わった準をもっと知りたい。話してみたい。

今日の講習が終わったら携帯変えよう。
そうしよう。

.
.
.


それから講習も終わってバス停でバス待ち。
懐かしい担任に捕まってギリギリになってしまった。だから準の見送りを諦めた。そして電話でクリスマスを家族で過ごせない報告にショックを受けた。クリスマスと正月は毎年家族で過ごしていたのに!


で、バスが来て乗れば後部座席に見覚えのある顔発見。
俺の血が一気に引き体温が下がった。
今の俺の顔は青を通り越して白いと思う。


なんで、お前が此処に居るんだよ?!


『ね、逃げられないでしょう?』
「……」
『友和さん、ホテルでちゃんと話し合いましょうね』


俺にラッキーや幸運は無い様だ。

バスは扉を閉めて出発した。


−羽山友和の不運連鎖End.−
(13.3.7)
結局言いたかった事は準のキス眠り癖は兄貴が仕込んだ事とそんなにブラコンではなかっという話にしたかったのだが余計な物が入ってしまった。


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