暮古月番外編

□香取ルート
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とばいっさ、香取一佐。
これは偶然か?

前に滝本先輩が俺に問いかけた“君は鳥羽の養子じゃないのか?”の、鳥羽に引っかかったのはきっといっちゃんがとばであったから。それに小さい頃お墓参りで鳥羽家に手を合わせたことが有る。
あの頃は何で黒い服を着ていたのかなんて解らずただ真似てただけだったけど。

香取=いっちゃん=鳥羽
これは本人に聞いても大丈夫か?
人違いかもしれないし、名前がたまたま同じだったとか。いっちゃんは女の子みたいな顔してたけど男は成長すると解らないよなぁぁあ。香取みたいなイケメンに変わっても違和感ないんだよなぁぁぁあ!

しかも結構共通点は有る。
食べるのが下手くそで変に食べる。片づけ下手。幼い頃のいっちゃんもボロボロするし、混ぜるし食べ物に関しては面倒見てたの覚えてるよ畜生!


『やー!トマトきらーい!』
『じゃあおれのニンジンとこうかんしよ?』
『するー!』
『コラァァア!鳥羽君羽山君好き嫌いは駄目でしょう!』


って、先生に怒られたなぁ。


『ふぇぇえん!ふぇぇえん!いたいよぉ!いたいよぉぉぉ!』
『じゅんこけたの?』
『いたいよぉ!いたいぃぃい!ふぇぇぇえ』
『おんぶしてあげりゅ!これだといたくないよね!』
『ふぇぇぇ……ぐすっ、ぐすっ、』

負ぶって貰った背中は自分と同じ男の子とは思なくて、女の子みたいなんだけど暖かくて。傷の痛みより背中の温もりが心地よくて泣き止んで、

『なきむちじゅんにはいっちゃがついてなくちゃだめだね!』
『うんっ、いっちゃんいなくちゃやだっ!』
『じゃーおおきくなったらー』


けっこんしようか!
……けっこんてなーに?
ずーといっしょってことー!
する!おれ、いっちゃんとけっこんする!
ふふふーじゅん、やくそくだよ!


………………ふっ、
とんでもないの思い出してしまったぁぁぁぁぁあ!コレは頭を抱えて悶絶するレベル!ぬぁぁぁあ!なんてこったぁぁぁぁ!

いや、でも!香取は香取家で生まれて香取家で育って瑰侠会長と長い付き合いだから香取の旧姓が有ってそれが鳥羽というそんな偶然的巧い話なんて無いだろう!


“息子は行方不明だ”


まさか、行方不明になって苗字が変わって香取にー……まっさかぁ。有り得そうで怖いんですけど。それに、いっさなんて珍しい名前有るか?俺みたいにじゅんなら沢山居るがいっさは居ないだろ。居ても偉人の小林一茶だろう。

こんな偶然って……

首輪に触れて呟いてみる。


「聞いてるか香取?お前は……あのいっちゃんなのか?」


きっともう眠ってるだろうけど。

と、思っていたけど電話が鳴り香取からだ。聞いてたのか?こんな夜中なのに、答えてくれるのか?


「……香取?」
『羽山ー……いや、じゅんー思い出してくれたのー?』
「っ、」
『やっとー思い出してくれたー?』


どうしよう、涙が出てきた。
電話から聞こえる香取の声も震えてる様に聞こえる。香取も泣いてるのか?


「お前、変わりすぎだろっ!」
『じゅんは変わらないね』
「なんでっ、言ってくれなかったんだよ!」
『だってーじゅんは忘れてたからー』
「……言ってくれたら思い出してた」
『そー?本当にー?』
「あぁ!」


感極まって言ったがたぶん思い出せなかったと思う。
でも、覚えてるか解らない相手に聞いて覚えてない、誰?とか言われたらショックだろう。俺だったら数日寝込む。


『じゃー、結婚の事はー?』
「ちょっ、それは幼かったからと言うか本当は意味知っててあぁ言ったんだろ!」
『ふふふーその約束を覚えてるならいーや』
「……いっちゃん?」
『ん?』
「本当に、いっちゃん?」
『そーだよ?じゅん、また泣いてるのー?』
「るせぇ!」
『ふふふー泣き虫じゅんは変わらないねー本当にーずっーと幼い頃からーこの学園で会った時からもー』
「……」


俺そんなに泣いてる?泣いてるか、主に恋愛面だと思うけど。


『今からー部屋に戻ってー、一緒に寝て良ー?』
「うん」
『起きて待っててー寝ちゃ駄目だーよ』
「あぁ」


返事を聞くと携帯は切れた。
携帯の画面を見て、天井を見上げる。

幼き頃の女の子の様に可愛かったいっちゃんが、香取。

信じられない再会にドキドキする。
香取は俺を知っていてずっと側にいた。
……でも、何故今なんだ?
思い出させるなら入学してから幾らでも機会は有ったはず。
兄貴が来た……言うタイミング的にそれが一番良かったのだろうか?

俺が他者から知って思い出し、香取が傷つかない。もし、それでも思い出せなかったらそれはそれでまた今度の機会に……いや、香取なら思い出させるか?


変に頭が冴えてきて香取が戻ってきたら体が冷えていそうだ。
ホット牛乳でも用意して待って様と部屋を出ると共同ルームは暗くて兄貴は部屋に戻ったと思う。

電気を点けて俺は冷蔵庫から牛乳を取り出した。


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