暮古月番外編

□香取ルート
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それから香取が戻ってきて俺を見つけるなりジャンピングハグ。

もう0時過ぎているのに俺は支えきれずにズドンと背中から床に香取と倒れた。


「いってぇ、香取!急に抱きつくな!」
「ごめーんね、嬉しくてー……」


すりっと香取は俺に頬擦りをする。
オマケにチュ、も聞こえた。キスしたな!


「退いてくれ、床痛いし牛乳温められない」
「んー……わかった」


香取が立ち上がり俺も起きる。
それからレンジに牛乳を入れてチン。

それからテーブルに向かい合って座った。


「廊下、寒かっただろ?」
「うん。ありがとー」


熱々の牛乳にふーふー吹いて飲む香取。
いっちゃんを思い出したのは良いけどいざ向かい合うと何話して良いのやら困る。

自分でも目が泳いでると分かる。


「……じゅん」


コトリとカップが置かれ香取は真剣な目をしていつもの緩い笑みで話し出した。
その表情に俺は一瞬胸がドキッと鳴った。


「俺ねー今までじゅんに会いたくて、努力したんだー」
「俺に?」
「俺の気持ち……本音はねー、出会ったあの頃からじゅんが好き。そしてー、この学園でーじゅんを見てきたけどー…やっぱり好きって思えるんだー」
「なぁ、それって」
「例え羽山が子供の頃のじゅんじゃなくてもー好きになってたよー」


ツキッと痛んだのは俺の胸。
香取が言ってる好きは友としてではないだろう。でも、俺はもう


「香取、遅いよ。俺はもう」
「遅くない。俺はー今からだから」
「今から?」
「そー…羽山が子供の頃を思い出してからー気持ちを伝えるって決めてた」
「おい!もし俺が思い出さなかったから」
「その時は俺の負けー……秀吉とのゲーム条件をクリア出来ずに、羽山に本当の気持ちを伝えられずに学園を去ってたと思ー」
「ゲーム?」
「秀吉と俺の人生と恋を賭けたゲームだよ」


おいおい、人生と恋をゲームで決めるってどういう神経してんだよ。


「遊びじゃないのか?」
「いやー俺にとっては本気のゲームだよー勝てば秀吉との体の関係は終わって自由に恋してじゅんに伝えられる。負ければ俺は秀吉の人形のまま、屋敷に戻り閉じこめられる」
「!」
「どんなに長く秀吉の近くに居てもー俺は秀吉を好きになれなかった。ずっとーじゅんしか考えられなかった」


牛乳をまた一口。
それからフーと一息。


「羽山ごめんねー、大好き」


そのごめんねにはどういった意味が含まれているんだろう。
今まで曖昧にしていたことか?
俺をずっと好きなままだった事か?
俺が松下先輩と付き合いだしたのに打ち明けた事か?
今、告白をしたことか?

それとも


「んっ、ふぅっ…香取っ、」
「もー遅いし、寝よーか?」


キスをするからごめんね?なのか。

空のカップを水に漬け俺の手を握り部屋へ。
何時も通り香取は俺の横で寝るらしい。

でも、告白をした後で横で寝られるのか?!
告白された側の俺は心臓がバクバク鳴って痛い。


「……キス以上のことはしないから、何時も通り一緒に寝るだけだからーねー?」


香取は先にベッドに入っては俺を引き込んで抱き寄せる。
何時も通りと言われても……って、


「キスはするのかよ!」
「うん。するー」


言った側から唇をくっつけて、それだけかと思ったのに舌まで入り込んできた。
無理矢理舌を絡めさせられて、体が熱くなるのと同時に睡魔もやってきた。


「んん゛っふぅっ、はぁっ……」
「おやすみ、羽山」


唇が離れて、香取の笑みを最後に俺は瞳を閉じた。

.
.
.

翌朝、俺は何故か香取と手を繋いで登校中。俺が離そうとしても香取は離さない。


「準、おは……香取!」
「あーおはようございまーす元部長」
「おはようございます」


とうとう強先輩に見つかり手を繋いでる俺らを見て温厚70%30%般若な雰囲気だ。


「その手はなんだ?」
「俺達ならフツーでしょー?ねー?」


ねー?って、俺に同意を求めないでくれ。


「準、俺以外と手を繋ぐな」


強先輩が離そうとするとヒョイッと香取が俺と一緒に避ける。
それからもサッ、スッ、スッ…と、俺とダンスをするように避けて、俺は流されるがままだ。


「楽しーね羽山ー踊ってるみたーい」
「いや、そろそろ離さないと!本気で先輩が般若になるから!」
「やーだ」
「かとっ、」


り、の前に塞がれた唇。
一瞬時間が止まったかと思えた。

そして固まる俺。
笑う香取。
注目する周り。


「香取!準から離れろ!」
「嫌ですってばー。俺、羽山が好きだからー」
「準は俺の恋人だ」
「だからなーに?引けってー?やーだね。俺は俺でー羽山が好きだからー引かなーいよ」

香取は俺を強く抱きしめる。
この現状に俺はただ聞いて呆然としてしまう。俺の事なのに。

朝、香取は強先輩に宣戦布告をした。


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