暮古月番外編

□金沢実留の休日2
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日曜日の朝、起きたら作務衣に着替えてお坊さん達が経を読むのを隅で聞いて足が痺れて悶え苦しんで朝食を食べる。

みなさんこんにちは。
借金返済学生・金沢実留です。
本日も晴天なり。


「実留、おはよう」
「おはようございます、大利さん」
「達海と呼べって言ってるだろ」
「あっ、僕の卵焼き!」
「これ達海、行儀が悪いぞ」
「加藤さん、達海って呼ぶな。達海呼びは実留しか許してない」
「達海、食べる前に経を読んでこい」
「達海、読んだらトイレ掃除」
「達海、だだ呼んだだけだ」
「お前らは黙って食っとけ!」


朝からお坊さん達は元気だ。
そして寝坊して来たたつ…大利さんも。

黙々と朝食を食べたら住職さんの嫁さんの多恵子さんと食器を洗う。


「実留君、これ終わったらお茶しましょ?美味しいお饅頭を頂いてね。一人じゃ食べきれないから2人でこっそり」
「お袋、実留は仕事が有るんだ。お茶なんてしてる暇はない」
「掃除なんてお弟子さん達で足りてるでしょう?」
「足りないんだよ!行くぞ実留!」
「多恵子さん、また」
「はい、待ってるわね」
「待たんでいい!」


多恵子さんは大利さんの母さんだ。
ゆったりマイペースで一緒に居るとぽのぽのする。
けど大利さんは気に入らない様でさっきみたいに横から入って僕を浚っていく。


「俺は外回りだからちゃんと掃除しとけよ!」
「はいはい」


箒を押しつけられた。
つまり外の掃き掃除って事だな。
やろうかと思ったら


「実留君、実留君」


と、壁から隠れて手招きする多恵子さん。
手にはお茶とお饅頭が見えた。


「ね?食べましょ?」


朝ご飯食べたばかりなのにな。
デザートは別腹と言う腹があると言うが女性限定だと思う。

でも、ほわんほわんとした多恵子さんを見ると毎回仕方ないなって思ってしまう。


「多恵子さん、少しだけですよ?」
「実留君大好きよ」
「ありがとうございます」


縁側に向かえばお弟子さん数人座っていた。どうやらお弟子さんも多恵子さんのお誘いに断れずに一緒に食べるようだ。


「2人きりだと達海が煩いでしょ?だから巻き込んじゃった」
「多恵子さん、それ前も言ってましたよ」
「あら?そうだったかしら?ふふふふ頂きましょう」


黒糖饅頭をみんなに分けてお茶を飲んで。
弟子達の少し愚痴話しや多恵子さんの近所の話しを聞いてほっこりする。


「御馳走様でした」
「いえいえ、付き合ってくれてありがとうね」
「では掃除に戻ります」
「頑張ってね」


各自掃除の続きをする。
外掃除は僕だけだった。

.
.
.

数時間後、植物に水をやっていたら訪問者がやってきた。

寺に似合わないスーツと燕尾服……この日本に燕尾服?!秋葉原と間違えてないか?!いや、居たな、有る人物の側近という設定のキャラが1人!


「おはよー金沢せんぱーい!」
「作務衣が様になってるね」


おいおいおい!やっぱりお前達かよ!
学園の生徒会長、瑰侠秀吉に後輩の香取一佐。
でも、来たら大体用件は決まってる。


「大利さんなら外回りだから午後に帰ってくるけど?」
「大利さんに用も有るけど、今日は君にも用が有るんだ」
「僕?」
「そーそー」


僕に何の用だろうか?
2人して笑ってるだけだ。


「取り敢えず水まきが終わるまで待っててくれないか?」
「解った。じゃあ上がって「あら、秀ちゃんにいっちゃん!いらっしゃーい!」
「多恵子さーん!おはよー!元気ー?」
「元気よーいっちゃんは今日も格好いーわねー!」
「ふふふーありがとー!」


多恵子さんと一佐がキャッキャと手を握って跳ねてる。
多恵子さんと瑰侠、香取は幼い頃からの付き合いだ。
そして多恵子さんと香取のテンションは似てる。そして仲良しである。


「多恵子さん、客間お借りします」
「どうぞどうぞ。此方へ、秀ちゃんまた背が伸びた?逞しくなってない?」
「はい。前のスーツ、袖が短くなって、コレ新調したばかりなんです」
「あらあら、大変ね。でも、良い感じに育ってるわー」
「ちょっと、セクハラですよ多恵子さん」
「ふふふ、ごめんなさいね。若い子はいーわねー私両手に花だわー」


多恵子さんは瑰侠と香取を客間へお通しした。そして僕は水やりの続きをする事にした。
おっ、虹が出来た。


.
.
.

長い水やりを終わらせて2人が待つ客間へ。


「待たせたな」
「いや、多恵子さんとお話してたからあっという間だったよ」
「多恵子さんは?」
「先輩が来る前にー退室したよー」


多恵子さん恐るべし。
何時もタイミング良く退室する。


「で、僕に用って何?」
「まぁその前にシャワー浴びてきたら?男前で良いけど、気持ち悪いだろう?」
「……じゃあお言葉に甘えて」


再び僕は退室。
瑰侠め、正直に汗臭いと言えば良いのに。

多恵子さんにシャワーを使うと言って浴室を利用する。

そして僕は後悔する。
何故素直にシャワーを浴びてしまったのか。
もっと深く考えなかったのかと。


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