清月番外編

□寒がりな坂木。
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※坂木、委員長高1
※まだ付き合ってない
※委員長視点

…………………………

11月、急激に気温が下がった日の朝の学校で僕は驚いた。
坂木が僕より早く登校して教室に居る事と坂木の格好に。
坂木の席にはこんもりと白い掛け布団が乗っているように見えた。


「おはよう、坂木?」
「……ょぅ、ぃいんちょ」


カタカタ震わせながらこちらを見て挨拶を返す坂木。
寮の掛け布団を被って暖をとってる様だがそれでも寒くて震えていた。


「大丈夫?」
「無理、寒い、耐えれない」
「……一応委員長として言っておくけど、寮の布団は外で干す以外は持ち出し禁止だからね」
「うん、だから自分の家の布団持ってきた」
「家の布団でも駄目だよ」
「俺に死ねと言うのか」
「カイロ持ってきなよ」


はい、と僕が温めていたカイロを渡すと奪う様に取って握りしめる坂木。
よく見れば机の上には枕が有って、授業受けずに寝るつもりで来たのではないかと思わせると言うか寝るセッティングだよね。


「これは酷い」
「酷いのは学園の制服だ。指定の物全て薄いだろ。もっと分厚く暖を取れるコートを作るべきだ」
「まさかコート着たまま?」
「勿論」


よく見れば布団の中にはコートとマフラー、膝掛け、手袋、耳当て。
寒がりすぎではないか?
11月でコレでは12月以降どう過ごすと言うんだ。


「それに、なんでスリッパなんだよ。ブーツで良いだろ、ブーツ」
「相当だね」
「委員長、明日の休み買い物付き合って」
「良いけど、布団にくるまって来ないでね」


授業開始のチャイムが鳴り先生が入ってくると坂木は布団から出て布団は膝に、枕、耳当て、手袋は紙袋の中へ仕舞って、授業は始終体を震わせ僕があげたカイロで必死に暖を取っていた。

教室の中、暖房効いて温いのに坂木の場所は冷房が掛かってる様に見え、先生までも坂木の近くまで来て暖房機の方へ手をかざしたり、「……温いよな?」と小声で言っていた。

熱が有るのでは無いかと疑ったが坂木が言うには熱はなく、極度の寒がりで毎年この季節になると地獄が始まるとか中学や家でも寒さには苦労してると言っていた。

明日の休みはカイロと袖の長いシャツや中に着るTシャツ、パッチ、厚い靴下を買うんだと意気込んでいた。

買った翌週からは布団と枕を持ってくる事は無くなったがまだ少し寒そうに学園を過ごして12月、冬休みを迎えた。

.
.
.


冬休み明けの学校。
僕はまた坂木に驚かされる。


「さ、坂木?」
「委員長、おはよ」
「おはよう」


でっかい鱈子が居る。
それが坂木を見ての第一印象だった。
だから頭の中ではキユーピーの天使がたーらこーたーらこーと歌い行進を始めた。


「その格好は?」
「……」
「坂木?」
「ね、ぶくろ」
「寝袋?!」


詳しく聞くと山奥の学園と町や地元の気温差が激しく、寒くて耐えれないんだそうだ。

だから登校して早々寝袋に入って動かずに座っていたらしい。


「まさか、その格好で授業受けるの?」
「受ける」
「駄目でしょ」
「いける。布団は駄目でも寝袋が駄目とは校則には書いてない。そもそも布団も持ってきては駄目だと校則には書いてない」
「いや、書いてなくても駄目でしょ」
「……」
「坂木?」
「……駄目じゃないもん」


グッサァァアー!と僕の胸に萌え可愛い矢が刺さった。
もんってなに、もんって。
ぷーって頬を膨らましても普通なら可愛くないと思うはずなのに坂木が好きな僕には可愛いフィルターが掛かっていてとてつもなくキュートで萌える。

思わず写メ。
坂木に何撮ってんの?って言われたけど坂木が可愛いのが悪い。
勿論連写で撮ったよ。

授業が始まって先生も坂木を見て驚いていた。
怖い先生が脱ぎなさいと言っても坂木は頑固に内申点が落ちても脱がないと言い張り困った先生は坂木を保健室授業を受けさせる事に決めた。


「おま、コレ、暑すぎるだろ」
「これで丁度良いです」
「いやいやいや、病院で視て貰って薬貰ってこい」


保健の先生が言うには保健室だけ非常に暑く、半袖でも過ごせると言っていた。

坂木、寒がりにも程が有るよ。
せめて僕に肌を触れ合わせて温め合う?って半冗談、半本気な事を言わせて欲しかった。

………………
寒がりな坂木−end−


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