清月番外編
□結局は委員長の顔が好きなんだと思う。
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目より長い前髪、肩くらいまでの長さでもの凄く跳ねる後ろ髪。
特にワックスとかつけていない、寝癖そのままの髪型が俺のヘアスタイルだったが、
「おはよ、委員長」
「おはよう……坂木?」
「坂木です」
委員長が驚いているのも仕方ない。
だって俺、
「髪、切ったの?」
「切った」
ばっさりと短く切りました。
前髪は分けなくても大丈夫だし、後ろも短くて跳ねない。
ただ、項が晒されているから少しスースーするというか寒いくらい。
「な、なんで切ったの?!僕の許可無しに!」
「もうすぐ梅雨の季節だから」
「だからって………あぁ坂木の髪がぁ!でも悪くないよ馬鹿ぁ!」
「ありがとう」
梅雨になると殆どの生徒は纏まらないとか、もっさりとするとか言うけど俺は梅雨の季節になると髪が超ストレートに変貌してとっても邪魔になる。
だから梅雨入りになる前に切るのが幼稚園の頃から大体決まりで当たり前である。
「委員長、髪伸びてきたけど切らないの?暑くない?」
「え、切った方が良い?」
「委員長の髪は黒いから重そうに見えるし、日本人形みたい」
「……日本人形」
委員長は眼鏡をかけてるけど顔が綺麗だから日本人形顔になってしまうんだよ。
夏場の夜に下からライトを照らされたら悲鳴を上げると思う。
それよりも、最近の委員長は目を擦ってる気がするんだよな。
「前髪、長いと目に刺さって痒くない?」
「確かに最近目が痒いと思ってたけど前髪か」
「花粉症かもしれないけど」
「じゃあ切るね」
と、言って委員長は筆箱から鋏を取り出した。
どう見ても普通の文具の鋏である。
まさか、それで切るつもりじゃ、
「んーと、このくらい?」
「駄目だ!委員長!髪はちゃんとした所で切って!せめて髪切り鋏で切って!」
「……坂木が言うならそうする」
そうしてくれ。
委員長の髪は綺麗だからせめて、せめてちゃんとした店で切ってきてくれ。
そんな文具鋏、しかも鏡を見ずに感覚で切るとか、無謀だ。
「どのくらい切ったら良い?」
「それは店員と相談して決めてくれ」
「希望無いの?」
「……軽めにして貰ったら?それと、綺麗だから染めないで欲しいかな」
「解った」
ニコッと笑って了解してくれた委員長。
お願いだから変な髪型だけにはしないでくれよ。
.
.
.
翌日、委員長の髪は何時もの優等生ヘアーに前髪が少し切り過ぎた?と思わせるような髪型になっていた。
「どう?一応軽くはなってるけど?」
俺の手を取って頭に乗せる委員長。
撫でてみろってことか。
「良いと思う、サラサラだな」
「ありがとう」
あー……うん、委員長はどんな髪型でもやっぱり笑顔が一番だな。
「坂木、今度切るときはちゃんと言ってね」
「大丈夫、一年後まで切らないから」
「流石に半年に一回は切ろうよ」
だって冬は寒いから髪の毛でカバーしないと、え?駄目?
−結局は委員長の顔が好きなんだと思う−
終われ