清月番外編
□家庭科部のボランティア(節分)
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坂木高1、部活ボランティアの節分の話。
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「おにはーそと!ふくわはーうち!」
「イタタタッ!イタタタッ!」
「おにはーそと!ふくわはーうち!」
「イタタタッイテーーーー!」
鬼の面を着けた先輩達に豆を投げつける子供達。
その投豆は容赦なく本気で投げてくるので当てられる先輩達は痛いだろう。
全力で逃げてるが子供達も負けじと追いかけている。
そんな俺は眺めていた、食用の豆を炒めながら。
「俺、鬼の面、資料見ながら頑張って作ったのに」
「坂木君のは怖いから駄目だし、そもそも鬼役じゃなくて台所専門でしょ」
「うぅ、鬼したかった」
「豆ぶつけられたかったの?帰ったらぶつけてあげようか?」
「違います、俺は子供と遊びたかったんです」
毎回保育園のボランティアをすれば台所のお手伝いばかりで子供と遊んだ記憶が無い。
今日は豆が嫌いになりそうな程豆を炒めてる(子供達がおやつに食べる用)。
「……鶴見先輩はどうして此処に?何時も子供達と遊んでるじゃないですか」
「僕は先生達から鬼より台所を立っててと言われて。顔に傷が付かないで欲しいってさ」
「鶴見先輩、先生や女の子達に人気ですもんね」
「ハハハハ」
何度鶴見先輩が女の子にママゴトで取り合いになっているのを見かけ、先生から贔屓にされているのを見かけたことか。
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恨めしく先輩を見て豆を見る。
そろそろ良いかな。
「つるおにーちゃーん」
「つるみにーちゃまー!」
「つるにーたまー!」
「「「遊んでー!」」」
「はいはい、ちょっと待っててね」
ほぉらやってきたぞ鶴見先輩目当てのガキ共がっ!(完全に妬んでます)
しかも名前まで覚えられてるし、ちゃまとたまって様って言ってるんだろ!
鶴見様万歳!(妬み過ぎて変になってる)
と、荒んでいた俺の所にちょっと太っていると思われる女の子がやってきた。
味見目的だろうか。
少しオデブの餓鬼の男共がお菓子の匂いを嗅ぎつけてよく味見させろと強請って来るけど、女の子は初めてだ。
火を止めて俺はしゃがんだ。
「ん?どうしたの?」
「あ、あの……こ、コレ!」
バッ!と前に出されたのはお面っぽい物。
しかも頭に被せる式である。
そうか、俺に鬼をして欲しいんだな!
「福のお面!これでお兄ちゃんは豆でイタイイタイしない!」
「え?」
「い、いつも、美味しいお菓子、ありがとうっ!」
「あ、ありがとう……豆、味見していく?」
「いいの、お兄ちゃんに、渡せて良かったから」
あらら。
コレは予想外。
ほっぺたを赤くしてる。
この子、俺にホの字だ。
「作ってくれてありがとう」
「ひゃ、ひやぁぁぁぁぁ!」
頭を撫でたら女の子は床をドスドス鳴らしながら出て行ってしまった。
福のお面か……頭にはまるかな?
歪だけど、笑顔らしい福のお面。
子供って可愛いな。
荒んでいた心が洗われた気がする。
と、のほほんとしていたが俺は気づいた。
鶴見先輩が消えている事に。
子供達に連れ去られてしまった様だ。
つまり、俺1人が此処に残ってるわけで、山盛りに残ってる大豆を俺1人で炒めるわけで。
「くそぉっ、くそぉっ!」
福のお面を頭に乗せながら2つのフライパンとホットプレートを交互に見ながら炒める面倒な事になり俺の心は再び荒んだ。
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「今日のおやつは食べる豆だから鬼に投げたら駄目だよーちゃんと食べろよー」
と、言って配っても餓鬼の男は豆は投げるもんだと認識した所為で先輩達に投げるしそれを女子が見てこれだから男子はーってマセている。
食べて貰えてるだけ良いか。
「ここにも鬼がいるぞー!」
「鬼は外ー!」
と、俺にも豆がふっかけられた。
痛いな、おい。
折角苦労して炒めたと言うのに。
「駄目!このお兄ちゃんは福だから内なの!福は内!」
俺の前に出たのはさっきの女の子だった。
「どこが福だよ!」
「面着けてるから鬼だろ!」
「デブ子のくせに!」
「デブ子も外!」
「で、デブ子じゃないもん、ともこだもん!」
おお、ともこちゃんか。
俺を庇ったからに。
仕方ない。
俺は持ってきた鞄から自分で作った鬼の面を持ってきて被った。
そしてともこちゃんをいじめている男の団体に入った。
「ゴォラ!女の子を虐めている悪い子はお前かぁあ!」
「うわぁぁぁぁあ!」
「怖いよぉ!怖い鬼がぁぁぁあ!」
「先生ぇぇぇえ!ひぇぇぇぇえ!」
「うわぁぁぁん怖いぃぃぃぃい!うぇぇぇええん!」
……やりすぎた様だ。
ともこちゃんまで泣いて逃げてしまった。
「坂木君、それだとナマハゲだよ」
「じゃあ包丁とか藁の服もいりますね」
「やめなさい」
「冗談です」
「その面外して」
「はーい」
で、福の面に切り替えたのだがあの子達は怖がって俺の所に来ることは無かった。
だけど、ともこちゃんは俺の所に来て、
「あのね、さっきね、怖い鬼がいたの」
「……そっか」
「怖かった」
「……お兄ちゃんが守れなくてごめんな」
頭を撫でて言うとまたともこちゃんは悲鳴を上げてドスドスと走って逃げてしまった。
ともこちゃんは俺がさっきの鬼だと気づいていなかったようだ。
そしてこの日以来ともこちゃんが俺の所によく来るようになった。
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所変わり、学園寮の食堂にて。
「と、言うことが有ったんだが俺、懐かれる要素有ったと思う?」
「いや、それは元々そのがんちょが坂木の事が好きだったんじゃない?」
「えー俺、台所とか雑用ばっかりで子供達の前に出たことあんまり無いのに、と、言うか何処を好きになったんだろ?」
「……お菓子作ってくれるからじゃないの」
「あぁ、そうだな。やっぱりそれだな」
「坂木、後で鬼のコスプレしてよ」
「え?!今日は疲れたから寝かせてくれ」
片思い委員長と坂木の会話でした。
因みに委員長が想像したのは鬼の角と鬼の虎模様パンツ1枚の坂木で坂木は全身タイツのパンツ1枚とアフロのヅラに角を生やした鬼を想像していた落ち。
−節分ボランティアの話−
おわり。