平凡勇者と腐った魔王様

□はじまりはじまり
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「ヴィリア、簡略に説明するな。チャムルが困ってるだろ」
「私は一秒でも早く貴方と繋がりたいのですよ!」
「繋がらねーよ。チャムル、その剣はお前の物だ。此処を出るぞ」
「待ちなさいサル!」


校長とイケメンの仲の雰囲気が悪くなっていないか?
校長が引き止めるっぽいんだが、イケメンは俺の手を引いて出ようとした。

けれど、イケメンが扉のドアノブに手を掛けようとした寸前に扉が突如氷に覆われた。

あれ?いつの間に氷が?まさか、コレが魔法か?!凄い!無詠唱で氷漬け!村で魔法使える人居なかったから魔法なんて初めて見た!学校に向かってる間も魔法なんて使ってる人見なかったし、あ、そう言えば側にいるイケメンは移動魔法使ったっけか。じゃあ二度目だな。

って、呑気に考えるじゃなかった!寒っ!この部屋寒くなってきたんですけど!


「ヴィリア、また来るから此処から出せ」
「また来るって何時ですか?そう言っても全然来てくれないじゃないですか、私は、貴方と居たいのに、話したいのに、触れて……閉じこめたいのに!」


うわぁあ!何言っちゃんてんのこの校長!しかも泣いてし!校長から吹雪いて部屋に雪が、氷が!寒ぅぅぅぅう!


「チャムル、少しだけ説明する」
「えっ、この状況で?!」


イケメンを見れば俺みたいに腕を擦ったり口をガタガタ言わせたりせず普通に堂々と腕を組んで仁王立ちして学ランのベンツが吹雪で靡いているだけだ。寒くないのかこのイケメン?!


「人族が扱える魔法には大きく分けて光属性か闇属性を使える。良い例が目の前のヴィリア。闇属性の氷使いだ」
「そ、そ、そんな淡々と言われても!」
「で、そんな魔法に勝には三つの方法が有る。一つは闇属性に対する光属性で対抗すること。二つ目が同じ闇属性を使い奴の魔法を上回ること。三つ目が魔術薬品を使い相殺すること」
「ちょっ、マズいって!説明してる間に俺達足から腰まで凍ってるって!」
「で、例外にもう一つ。お前の剣の力」
「え?」
「抜いてみろよ」
「いや、もう抜いてるって!仕舞ってないから!」
「おっかしーな。能力に目覚めてないのか」


いやいやいや、良いから早くこの場をどうにかしてくれ!俺はもう足の感覚が無くなってきてヤバいよ!凍傷になるって!


「剣がまだ眠ってるのかもしれんな。仕方ない、特別に俺が此処を納めてやるよ」
「お、お願いします?!」


いやいやいや、こんな事になったのはあんたの所為だからな?あんたが校長の機嫌を損ねたんだからな?


「じゃあ対光属性で相殺しよう」
「は、早くお願いします!」


イケメンは右腕を上げ、指鳴らしの構えをしたが、何を思い出したのか2秒後にその腕を下ろし、


「と、言いたい所だがこの部屋は俺の魔法は効かないし使えない」
「はあ?!」
「薬品も無い。ピンチだ勇者!俺の処女が喪失してしまう!」
「んなぁ?!」


いやいやいや、あんたの処女なんて知るかよ!何度いやいやいや、を言わせる気だよ?!ピンチ過ぎるだろコレ?!どーすんの?!俺特殊らしい剣は使えないし魔法なんて以ての外だ!


「サルとそんなに仲良く話すなんて、許せません、チンチクリンはシんでしまえ!」
「っ、」


ちょっ、なんにそれ?!ボッタクリ?!横暴?!理不尽?!そんな理由で殺されたくないしシにたくないからな?!その前にその氷柱の様に尖ってるそれは俺に投げるつもりですか?!脳天に貫かせるつもりですか?!硬い氷柱は体を貫通して殺人のっていやいやいや、まだ死にたくないんですけど!!

本当にどうにかならないのか!
そう思った瞬間、俺の背後から校長の吹雪や氷
より冷たくて寒い気配がした。
俺の後ろと言えばイケメンしかいない。

何故か怖くて、イケメンの顔は見れなかった。
けるど、今まで聞いてきた声より低い声が聞こえた。


「ヴィリア」
「!」
「ヴィーリーア?」
「……ごめんなさい」


イケメンの低い声に今まで怒り狂っていた校長は怯えた様な……それから謝って、え?何?なんか吹雪止んだ?氷柱も溶けたし、周りを見れば部屋の氷は綺麗に溶けて元通りになった。


「でも!サル!」
「繋がりはしないがほら、抱きしめてはやるよ」
「サルゥ!」


……えーと、何だこの大茶番劇は。
イケメンが両腕を大きく広げて校長がその中にタックルする様に抱きつき子供みたいだった。
あ、靴や服も濡れてなくて乾いてる。魔法って凄いな。

と、校長とイケメンを見ないように魔法に感心しているとイケメンがまた話を始めた。と、言うより


「悪い、後で行くから待っててくれ」
「え?」


イケメンは俺を見るなりパチンと指を鳴らすとまた足下に光が灯り包まれた。



そしてまた眩しさの余りに目を瞑って目を開ければ知らない場所。黒革のソファーで俺は横になっていた。

つうか、魔法使えなかったんじゃないのかよ。移動魔法使えてるじゃねーか。此処何処だよ。上半身を起こして見渡したがやっぱり知らない場所。それに、俺は入学式に参加しなくて良いのか?


「おいサル!入学式始まっ……誰だお前?」


ガラッとスライドして開いた扉。其処には真っ赤な髪を立て、魅入ってしまう程綺麗な腹筋と上腕二頭筋。其処に彫られた炎の様な刺青。武装からして武術科の人だろう。顔も髪も瞳も勇ましいと言うより猛獣の様。顔の切り傷と眼帯がコレまた目立つし、勲章のみたいで格好いい。


「迷子か?」
「お、俺はチャムル・カブリア。此処で待ててって言われたから待ってる」
「誰にだ?」
「イケメン?」
「イケメンって奴なのか?そんな奴は居たっけ?」
「名前は知らなくて!見るからに美形っつかイケメンで、髪は黒くて短髪で、瞳はルビーとアメジストの様なオッドアイで肌白の長身で」
「……サル?」
「あっ!そう言えば校長先生がサルって言っていた様な」


それを聞くと真っ赤なムキムキの人は目を見開いて走り去ってしまった。俺、マズいこと言った?そんなこと、無いよな?


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