平凡勇者と腐った魔王様

□エピローグ+プロローグ
1ページ/1ページ


−エピローグ−

数時間後宴を楽しんでいる勇者を呼び出した魔王は言いました。


「さぁ、私の首を跳ねるがいい。そうすればお前達の使命は終わる」


床に膝を付き白い首を晒す魔王に勇者は驚き困惑します。何故なら宴の席で魔王と話せば話すほど魔王は悪い奴ではないと思ったからです。そして首を取っても後味は良くない。この魔王を倒す意思がもう無いに等しくなっていた。


「な、なぁ……世界で暴れているモンスター達を大人しくさせることとか、この魔界に戻すことは出来ないか?」
「二つともきっと可能だろう。側近の呪詛が解けて私の声が届くなら」
「なら、まずはその可能な二つをして欲しいかな?」
「私の首を跳ねればモンスターは消え、この魔界もお前達人族の物になるんだ。どちらがお前達の大好きな利益になる?私の首を跳ねた方が利益が有るだろう?」
「確かにそうだけど……俺達はお前を殺したくない」
「絆され、騙されたとしても?」
「俺はお前がそんな奴に見えないよ」


そっと抱き締めてきた勇者に魔王は瞠目した。そして久しぶりに感じた温もり。ジワリと魔王の瞳に泪が潤む。


「殺さぬと言うのか?こんな役立たずでお飾りな私を」
「あぁ、殺さない」
「殺さねば、お前達の旅は終わらないのに?」
「俺は旅をするのが好きでな、終わらなくても良い。それに言った二つをしてくれれば俺達は神子や村長から報酬を貰えるし、自由になれるよ」


魔王の頭を優しく撫でる勇者に魔王は弱く抱き返し嗚咽を漏らして涙した。

死ねば友の所に行ける。
けれど心の何処かで死にたくないと思っていた。


こうして魔王は殺されず、魔界にモンスター達を集め大人しくさせた。
勇者達も成功を成し遂げたとして沢山の祝福の声と報酬を貰った。

世界は平和になったとさ。
めでたしめでたし!

で、終わるわけが無く。


「時々勇者達が遊びに来てくれるのは嬉しいな!」
「魔王」
「ん?おや、魔法戦士のジェストではないか。忘れ物か?」
「あぁ」
「何を忘れた?ペンダント?指輪?」
「魔王」
「え?」
「貴方を忘れました」
「わ、私?っ、ウワァァァア!」
「フフフフ……これで貴方は僕のものです」


魔王は小瓶に閉じこめられ魔法戦士の屋敷に連れて行かれました。

そして魔王は魔法戦士にジェストが持つ土地の範囲しか動けない呪詛をかけられ、ジェストの地に永遠に縛り付けられたのです!


「私は魔界を統べる仕事があるのです!」
「そんなのしなくても良い。貴方は僕のものだ。僕だけを見ていれば良い。愛してるよ愛しの魔王様(ペット)」
「いやだ!出せっ!私を出せ!やっ、触れるなっいやっ、ぁっ、あー!」


ジェストは愛しの魔王を手に入れ満足です。
それを勇者達は知り魔王を哀れみました。
けれどどうすることも出来ず、月日は経ち、ジェストの地は何時しか学園となったのです。


そうして学園には老けない永遠の若さを持つ風紀委員長、魔王のことサールドール・L・エクステスが生まれたのでした。


.
.
.


プロローグ


父上が亡くなって私が魔王に就任したと同時に部屋に閉じこめられた。

勇者達がやってきて自由を得られたと思ったら魔法戦士に土地に縛り付けられた。


結局私は世界を知らない。
出られない私は狭い世界の中でしか生きていない。


空を見上げて自由に飛ぶ鳥を見て羨ましく思い、校門をくぐれる生徒達を見て呪詛をかけた魔法戦士が憎く思った。


妬み続ける日々が巡る。
けれど自分から外に出ることは無かった。




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ