平凡勇者と腐った魔王様

□それからそれから
1ページ/51ページ


丁度サルとユアン先輩が一緒に入院(?)しているので聞いてみた。


「聖剣の出し方ってどうやるんですか?」


我ながら情けない話だがどうやって出せば良いのか解らない。
毎回死んでも構わないと本気で思うのも大変なのでもっと簡単な方法は無いかと2人に聞いてみたわけだ。

サルは歴代の勇者を見ているから出し方知っているかもしれないし、ユアン先輩は神子で勇者をよく知る者。それに夢の中で俺から聖剣(の器)を取って使っていたから知っていそうだ。


「聖剣?僕が居たら必要な時、簡単に出せるよ」


そう言ってユアン先輩は俺の手を取って重ねてから手を上げると俺の掌から聖剣(の器)が出てきた。すげー。でも抜けるというかヌルヌルッと出る感覚がして気持ち悪い。って、違う!


「ユアン先輩が居なくても1人で出すにはどうしたら良いのかって!ユアン先輩が居ないときに必要になったら困るし」
「服、脱いでみろ」
「そうだね、脱いで」
「え?」


2人から脱げ脱いでって何故?!


「痣が何処かに有るはずなんだ」
「腕には見あたらないしね」


痣?え、痣から出すの?毎回聖剣(の器)は降ってくるから呪文とかモーションが必要かと思っていた。


「ランゼ!……って、あぁ、そうか。このカーテンは魔法を無効化する効力が有ったな」
「サル、何しようとした?」
「チャムルの服を消して全裸にしようとしたんだが?」


懐かしい呪文だと思ったけど此処で出すなよ!そして無効化されて良かった!


「取りあえず聖痕を探さないと聖剣は出せないし、脱いで」
「あ、いや、家で見つけますから」
「背中とか見えないだろ?遠慮せず脱げ」


2人に肩を掴まれた。
これは逃がさないと言っている。
そして読めるぞ、ユアン先輩は俺の裸を見たくて、サルはユアン先輩の反応と俺の反応を見て楽しみたいだけだと!


「仕方ないな、脱がせてあげるよ」
「ストップストップ!自分で脱ぐ!自分で脱ぎますから!」
「脱がせて貰えよ」
「サル自重!」


まったく、生き生きと目を輝かせてさ。
こんな事で輝かせないで欲しい。

取り敢えず2人に背中を向けて上を脱いでみる。

前は無い。平らな腹だけだから腹筋欲しいな。横腹も脇にも無い。


「サル、ユアン先輩、背中有りますか?」
「「無い」」
「……下も?」
「脱げ」


上を着てから脱ごうとしたが上の服をユアン先輩が持っていた。
そのまま脱げと言っている。
言葉ではなく空気で言っている!


恥ずかしいが脱いでみる。
足の裏、無し。足の裏なんかに有ったらそれはそれで出しにくい。
脹ら脛、太股にも無さそう。
と、言うことは。


「定番下ネタな場所に…?!」
「チャムル君。どんな場所から聖剣を出そうと僕は嫌いにならないよ」
「いやだぁぁぁぁあ!」


嘘だ嘘だ嘘だ!
最後の砦の前からも後からも出したくない!わざわざズボンをずらして聖剣を出す勇者なんて羞恥だ!恥辱だ!汚名だ!変態勇者確定じゃないか!本気で死んでも構わないと思う方が良い!


「チャムル君おいで。布団の中で見てあげるから」
「結構です!服ありがとうございました!」


ユアン先輩から服を奪って急いで着る。
折角恥を我慢して脱いだのに!最悪だ!

結局、毎回死んでも構わないと本気で思うしかないのか!


「チャムル、恥じることはない。歴代の勇者に乳首ギリギリに聖痕が有った勇者も居れば内股に有った勇者も居たからな!」
「際どい所に聖痕ですか。良いですね」
「良くない!」


尻とかアソコとかに有るのはもっと良くない!泣きたい。とても泣きたい。


「チャムル君はどんな聖痕だろうね?」
「……聖痕って、色々と有るの?」
「まぁ、前の勇者は獅子と剣だったし、十字架に茨の聖痕の勇者も居ただろ、他には羽とか輪、鷹やジャガー、華も居たな」
「へぇ……獅子良いなぁ」
「でも、各勇者に合った聖痕が出るからチャムル君はチャムル君の聖痕が出てるはずだ」
「俺の、聖痕……」
「トマト?モヤシ?」
「トマトとフォークの聖痕は斬新ですね」


なんかイヤだなそんな聖痕。
ダサいよ。でも、本当にトマトだったら俺らしいと言えば俺らしいのか。


「因みに初代はハートだった」
「は、ハート?!」
「チャムルもハートかもな?」



ハートオンリーはちょとなぁ、せめてハートと何か欲しい。

でも、初代と同じとは限らない。
容姿は似てるかもしれないが性格は違うはずだから。

俺には俺の聖痕が良いな、トマトでも良いからさ。

初代と同じだったらサルはもっと俺に初代を重ねるだろうから、それは嫌だ。
俺は只でさえ容姿が似てるのに。
重ねて見られるのは……


「チャムル君、のど乾いた」
「えっ、あ、水は此処に」
「リンゴジュースが飲みたいから買ってきて」
「解りました、サルは?」
「俺は青汁で頼む」
「無茶ぶりな!」
「無ければ俺もリンゴで良い」
「了解」


頼まれてリンゴジュースを買いに俺は出た。
そう言えば出した聖剣はどうなってるんだろ?しまった覚えないし。誰かが回収してるのか?俺の体に自然と戻っているのか?
今度実験してみるか。


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ