平凡勇者と腐った魔王様

□それからそれから
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それにしてもサルとユアン先輩の仲が良くなって良かったなーと暢気に購買でリンゴジュースを2つ買って戻っていると前からセイがやってきた。


「セイ!今日は休みなのにどうしたんだ?」
「ボクは勉強しに図書館に来て休憩に購買に向かってたんです。チャムルこそどうして学校に?」
「俺はサルとユアン先輩のお見舞い。休みなのに勉強って偉いな」
「魔法のこともっと知りたくて、知って損は無いですし拾得したい魔法が有ればサルに教えて貰えますから」


ま、真面目だ!
絶対にセイの魔法知識は俺達の中で一番だろう。イバーユは知識より自分自身を磨いてるし。と、言うより俺、遅れてるよな!
寝たきりだったりカーテン弁償の返済に放課後は絶やして今はお見舞いだろ。
お見舞いの後は家で休む(寝る)予定だったし。

ゲイドさんに体を鍛えられていても疲れは溜まる。だから貴重な休みの日は寝て過ごしてしまっている。寝ないと次の週が保たない。

けど、セイも同じゲイドさんのメニューをしてるのに勉強までしてるとは。きっと放課後も通っているんだろうな。


「サルの怪我の具合はどうですか?」
「本人は平気だと言ってるけどまだ抜糸してないし、当分ゲルドさんの修行は続くと思う」
「そうですか、早く魔法の修行を再開したいですね」
「それもそうだよな。使わないと感覚が鈍る」


と、言うより最近はフェロモン魔法より勇者の事ばかりだな。強制に覚醒したからか視界は少しカラフルになったし、妖精に好かれる事も解ったり聖剣の出し方とか。

フェロモン魔法使ってないな。むしろユアン先輩に奪われてフェロモン魔法の威力を知ったばかりだ。


「確かにそうですね。忘れないように小さな魔法を使いますが前と同じようにやれと言われたら威力の加減が出来ずに自爆しそうです」


セイは人差し指と中指に電気を走らせる。
それはまるで指のスタンガン。食らったら火傷して気絶しそうだ。
でも、普段からそうやって少なくても使っていたらコントロールとか鍛えられそう。

使っているのと使ってないのとでは違うと思う。まぁ、考えながら使わないと意味は無いだろう。ただ自分の魔力を放出してるだけになる。


「あ、そう言えば購買に飲み物を買うんだったな。悪いな、止めて」
「いえ。チャムルと2人きりで話すの久しぶりで嬉しいですし……あの、待ってて下さい!直ぐ買って戻りますから!」


セイは俺の返事を聞かずに購買に走って入って行った。
俺、まだ保健室に戻るし、保健室と図書館って逆方向だったはず。

話せるようなベンチは見あたらないし、立ち話?でも、早く戻らないとサルとユアン先輩が煩そう。(遅い。それに温い。買い直してこい。と、サルとユアン先輩の声が想像出来る)

だけど何も言わずに戻るのもなんだから待つことにした。


「お、お待たせしました!」
「おー。セイもリンゴジュースなんだ」


袋を見れば甘いポケット菓子とリンゴジュースが見えた。頭を使うと甘いのを接種するタイプなんだろうな。


「はい。青汁が品切れてたのでリンゴジュースにしました」
「へぇっ、って、此処青汁有るのかよ?!つか、サルも希望してたし青汁って人気?!」
「美味しいですよ。明日にでも飲んでみますか?」
「明日入荷していたら買おうかな」
「……あ、あの!気に入らなかったら買い損になりますからボクのを飲んでみたら良いと思うのですが!どうでしょう?!」
「え、良いの?」
「はい。お気に召して買った方が良いですし!」
「お気に召すって……まぁ、そうだな、セイが良いんなら明日少し貰ってみようかな」


そう言ったらセイは右手を拳にして小声でやった!と聞こえた。
何故喜ぶんだ?案が通ったからか?青汁仲間が増えるからか?


「それじゃあ、俺、保健室に戻らないといけないから」
「送ります!」
「それだとセイは遠回りだろ?来た道戻るし、図書館に荷物置いてるんじゃないのか?」
「だ、大丈夫です!個室の鍵は閉めてますし、貴重品は持ってますから!ボク、チャムルともっと居たいし、話したいんです!」


必死に言うセイを見て思い出す。
そう言えばセイも俺に矢印を向けているんだったな。思い出しては断れない。
それに必死なセイを断ってショックな顔をさせたくない。

本人は遠回りでも良いと言ったし、断る理由は無い、よな?


「一緒に来るならサルの様子を見て行ったらどうだ?ユアン先輩も居るけど、聞くより見た方が良いと思うし」
「……オマケに、見ていきます」
「オマケって……でも、来てくれたらサル喜ぶよ」


弟子が出来たとき凄く喜んだサルのことだ、セイやイバーユも来たら大喜びすると思うし。早く教わりたいと言ったらマッハで傷を治しそう。

師弟の関係も友好じゃないとな。

と、1人で納得させていたらムッと不機嫌な顔をしたセイ。


「チャムルは、サルの事が好きなんですか?」
「好きかな?」
「っ、その好きはどういう好きなんですか!ラブですか?!ライクですか?!」
「普通に。セイもソイルも好きだけど?」
「……え」
「好きな、いや、大切な人が倒れたら心配するのは普通だろ?」
「そう、ですね」


悪いな、セイ。
まだ知り合ったばかりなのに恋愛の好きに応じれるほど俺は軽くない。

だからまだ保留の方向でよろしく。


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