平凡勇者と腐った魔王様
□エメラルド勇者と神子と腐魔王
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「う゛ーん、う゛ーん」
「何唸ってるんだチャドル」
「俺の神子がお前の言う様な歴代みたいな神子だったからどうしようかと思ってな……」
桜が咲いている春。
魔術・武術専門学校の入学式である今日、隣に居る勇者チャドルの神子が入学してくるそうだ。
どうもチャドルは歴代の神子の性格は嫌らしい。
俺は万歳ありがとうございます眼福至極ですなんだけど。
ちなみに歴代神子の性格は勇者様ラブ!ラブ!ラブ!魔王を殺す許可を下さい!勇者様〜!勇者様〜!だぁぁぁい好き!!!と言って抱きついて離れず世話を焼きまくる神子ばかりである。
チャドルにそういう神子ばかりだと言ったらドン引きしていた。
それに上手く付き合える気がしない、しつこくてぶった斬ってしまうかもしれないと言っていた。
「せい!せい!」
だからか、今から会うと言うのに抱きつかれた時の為にと背負い投げの練習を始めているチャドル。
ちなみに歴代で神子を背負い投げした勇者は見た事が無い。
勇者と神子の顔合わせは入学式後、中庭に神子が来ればお互いに自己紹介をする事になっている。
歴代の神子の事を思えば入学式なかんかすっ飛ばしてサボって勇者に会いに来ると思うけどな。
「どこからでも掛かってこい!投げ飛ばしてやる!」
「初対面で投げるなよ」
「初対面で抱きつくのもどうかと思う。斬らないだけマシだと思っていただきたい」
斬るのは流石に……まぁ、俺は神子と勇者のラブラブな所が見れれば良い。目の前でキスしてくれたって構わない。ドンドンやってくれ。やってください。
そう思いながら待つこと45分後。
入学式が終わったチャイムが鳴った。
「おいサル、神子来ないぞ」
「おかしいな、寝坊か?」
何度も言うが歴代の神子は勇者に会いたくて会いたくて震えて飛んでくるんだが。
まさか入学式に出席してるとか?
それとも本当に寝坊か?
と、考えていれば目の前に魔法陣が出現して突風が吹いた。
あ……神子が、来るな。しかも風使いか。
隣のチャドルを見れば完璧に構えていた。
あぁ、俺は神子が投げ飛ばされる所を見るのか……。
「……初めまして、神子のリーリア・セイムスです」
風が止んで魔法陣の上に立っていたのは長い白髪をみつ編みで束ねて肌が色白、左目に黒い眼帯をした線の細い、真っ白な男の子が立っていて、俺達を見て自己紹介をして一礼をした。
着ている服まで白いから黒の眼帯が凄く目立つ。
だけど右目は金の辺り、神子だ。
神子の特長は白髪で金の瞳だからな。
それにしても……
「ち、ちいさ!」
「……はい、成長期はまだですので身長はこれから伸びる予定です」
おお、俺の小さい発言にイラッとした気持ち込で返してくれた!
だって、今期の神子の身長が155くらいで、俺や勇者の身長は高い方だから尚更小さく見える。
勇者ならこの神子を片手で持ち上げられるんじゃないか?
「あ、えーとすまない。俺は風紀委員にして魔王のサールドー」
「サル、と呼ばれている魔王ですね。存じております」
「お、おう(まだ名乗っている途中なのに……)」
「勇者様はチャドル・カブリア様でお間違いないですか?」
「あ、あぁ」
俺に対しては刺が有る言葉だがチャドルに対しては柔らかな言葉である辺り流石神子様である。
だけど……
「これから、宜しくお願いします。それではまた明日」
神子は一礼をして突風が吹いたかと思えば姿を消した。
「……サル」
「なんだ」
「話が違うぞ」
それは俺も言いたい。
「と言うかあの神子帰るの早っ!!今までの神子は勇者の腕にくっついてこれからお食事どうですか?とか、聖域に行きませんか?とか、仲を深めるためにお家につれてって!とか、体の関係を築きましょうと言って俺にベタラブを見せつけていたんだ!なんなんだあの潔い直帰は?!期待外れだ!」
「なんの期待だよ?!」
「神子×勇者ばかりだったから今回は勇者×神子か?!だが悪くない!」
「腐魔王黙れ!」
チャドルに斬られそうになったが白刃取りが決まって斬られずに済んだ。
今後、この2人に期待しようではないか。