平凡勇者と腐った魔王様

□エメラルド勇者と神子と腐魔王
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勇者チャドルと神子リーリアが顔合わせして一週間が経った。

この日、俺はチャドルと校内の見回りをしていた。


「サル、リーリアが素っ気無さすぎる」
「……なに?」
「俺が飯を誘ったら一緒に食べるけど全然話してくれないし家に呼んでもやんわりと断られるしリーリアが授業を受けている所を見ようとしたが追い出された」
「ほぉ」
「それに、リーリアには友達がまだ出来てないんだ!パートナーとなる先輩もまだ出来ていない!不安だ!」
「まぁ、歴代の神子に友達なんて見たこと無いしパートナーは勇者だけというハイパー一途。リーリアもそうなんじゃないか?」
「歴代の神子とリーリアを一緒にするな!」


おぉ、めんどくさい。
俺に相談せずに本人に言えよ。
と、言うか、


「お前、べたべたされるの嫌じゃなかったのか?」
「べたべたされる覚悟をしていたのに空ぶった所為で不燃焼だ。逆に俺がリーリアを気になって仕方がない」
「ストーカーでもしてろ」


まぁでも、こうやって勇者と話しながら仲良く見回りすると大抵勇者と別れた後に神子がやってきて嫉妬をぶつけれるんだが。
その時にでも聞いといてやるか。


「サル、ストーカーをするには何流の武術が最適だろうか?」
「本当にやろうとするな。お前がコソコソするのは向いてない」
「おいおい、人に勧めておきながら向いて無いってちゃんと相談に乗ってくれよ!答えてくれよ!」
「はいはい。神子に会ったから聞いといてやるから」
「ちゃんと聞いといてくれよ、一字一句忘れるな!」


何という無茶ぶりな。一字一句忘れるな?だったら俺を介さずに本人に聞けよ。

俺は人の恋愛を見るのが好きであって関わりたくはないのに。
どっかにいちゃいちゃしているカップルか修羅場カップル落ちてないかなぁ……。

そんな事を考えながらチャドルと雑談しながら見回りをした。



昼休みは食堂で飯を食ってホモップルウオッチングをしようと決めて食堂を出ようとした。が、袖をクイッと引っ張れて後ろを見てみれば小さな神子がそこに居た。


「……少し、お時間を良いですか?」
「構わないが戦闘なら中庭に移動するが?」
「いえ、お話だけなので風紀の部屋でしたっけ?そこで良いですか?」
「……こっちだ」


歴代の神子なら食堂を出た瞬間戦闘開始だ。
「僕の勇者様と仲良くするな!」とか、「何の話をしていたんですか!なんで魔王なんかと!勇者様の馬鹿ァァァあ!」って感じで八つ当たりされる。

だから正直、話だけっていうのは珍しい。
不意打ちに攻撃をされるかもしれないから注意して神子と俺の部屋に向かった。

.
.
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……風紀の部屋に着いたが、何もなされず、話もせずに中に入れて取り敢えず座られてお茶を煎れて出した。


「どうぞ」
「ありがとうございます」


あ、普通に飲んだ。
歴代の神子に茶を出したら一口も飲まれないことが多いと言うか「魔王が煎れた茶なんて飲めませんよ。何の呪いがかかることやら……」と、言われ続けてたんだが。


「で、話ってなんだ?」
「……あの、勇者様と、何のお話をしていたのですか?」


あ、やっぱり神子は神子か。
そこは歴代と変わらないんだな。


「お前の話」
「僕の、ですか?」
「そうそう。家に呼んでも断られるとか本当に俺の神子なの?って嘆いてな。お前のこと気になって仕方がないらしい」
「そ、そう、なのですか」


神子は嬉しそうに頬を赤くしてお茶をまた飲んだ。


「他のお話は?」
「他?……ストーカーをするには何の流派が適切なのか、神子と仲良くするにはどうしたら良いのか、神子に友達はいないのかとか、だな」
「誰をストーカーすると?」
「お前」
「……僕の事ばかりなんですね」
「今日はお前の事ばかりだったな」


神子は出していたクッキーも食べた。


「あ、あの」
「ん?」
「ゆ、勇者様の、好きな食べ物とか、お誕生日とか……教えてくれませんか?」
「本人に聞けよ」
「ぅ……そう、ですよね」


しゅんと落ち込んだ神子を見て俺は思った。

この神子、シャイだ。
きっと本人を目の前にしたら上手く話せない、口が回らないタイプだと。

クールに見えて内心きょどりまくりのシャイな神子だと、俺は気づいた。
この神子には勇者からガンガン攻めて頂こうではないか。

本当に勇者×神子が見れるかもしれない。
心の中で俺はガッツポーズをした。

早く勇者に伝えたい、そして見たい。
俺にはそれだけだった。

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