平凡勇者と腐った魔王様

□プロローグ
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プロローグ

毎日家の畑の手伝いと森で遊んでいた子供は、ある日突然母に言われました。

「今からこの学校に行きなさい」
「え?」
「寮生活だから卒業するまで家に戻ってきちゃ駄目よ」
「え?ええ?」
「荷物は纏めといたから。地図を頼りに行きなさい」
「え?えええ?」

母に荷物を手渡され地図を握らせられると家を追い出されてしまった。
突然の事に頭は追いつかず、扉を開けようにも鍵がかかって開かないし扉を叩いても中から反応は返ってこなかった。

「マジかよ……」

地図を見ると家の印と目的地の学校に印がついていた。地図からすれば山を二つほど越える距離であった。

「……徒歩、だよな……はぁ……」

家には移転魔法が無ければ馬もない。
交通手段は徒歩のみである。
ため息が出るのは仕方ないだろう。

少年はまだ突然の事で頭は追いつけていない。
荷物と地図を見て家を見て……また地図を見た。

「畑は一段落してるし、森も大人しい。えーでもさーえーマジで?今から?マジで今から?」
「早く行け」
「ギャッ!」

扉が開いたかと思えば母に軽く吹っ飛ばされ、体は何度もコロコロ後転して木にぶつかり止まった。目は星がチカチカ光った。

少年は涙目になりながらも立ち上がり、尻や膝に着いた砂埃を払い地図を握りしめた。

「……いってきます」

少年は耐えきれず泣きながら家を後にした。
進んだ森の中は逆方向だと気づかずに。


......................................................


同時刻。

天の者は故郷の空を思い出し、
山吹と藤紫の者は砂漠を越え、
萌黄の者は森で座禅し、
朱の者は暖炉の燃える火を見つめ、
月白の者は祭壇で神の声を聴き、
暗黒の者は1枚の書類を見ながら口角を上げていた。


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