漆黒の魔導師

□小ネタ集
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【使い魔】




リ「お兄ちゃーん!!またヨークとアルカンが喧嘩してる!!何とかして!!」

アルカンは鷲の使い魔なのだが、少々気性が荒いため、度々ヨークと喧嘩をする。
蜘蛛の使い魔であるアデレイドの腹の毛の手入れをする間、使い魔たちを放飼いしていたのだが、この二体だけは別々にしておくべきであった。
アデレイドを置いて行こうとしたが、どうも、離れてほしくないらしく、ふくよかな腹を押し当てるように、軟い8本足で掌を包んでくる。

リ「お兄ちゃーん!!聞こえてるでしょー!!
早くこっち来て!!
この子たちは特に、お兄ちゃんの言うことしか聞かないんだから!!」

急ぎ足で向かうと、二体の間に入って、何とか止めさせようと奮闘するリカの姿があった。
だが失敗し、鷲の方に、頭を何回もつつかれている。

リ「いたっ!いたっ!もー!!」

対するヨークの方はというと、いつも温厚なのだが、たび重なる攻撃で、怒り心頭らしかった。
シャー!とか歯をむき出しにしながら、威嚇している。
サイアンは飛びかかろうとした蛇の鼻先に、掌を当て、宥めた。

サ「だめ。お前の気持ちは分かるが、アルカンを殺してはいけない。おちついて」

言いながら、顎の下に手を滑り込ませ、なでくる。
はじめこそ、興奮気味だった蛇は、次第に大人しくなり、気持ちよさそうに喉をならし始めた。

サ「…鱗が剥がれてるな。後で、傷薬を塗っておかないと。」

リ「ちょ、お兄ちゃん!ヨークの心配より、アルカンの方何とかして!この子…おあっ!!」

ばたばた暴れる鷲を、抱えるように抑えこもうとしていたリカだが、当然、力押しで勝てるはずがなく。
リカの手を離れたアルカンは、冷静さを取り戻しつつあったヨークに鉤爪を立てる。
が、それを制したのはサイアンだった。
庇うように差し出された腕を、鉤爪が掻き切った。

サ「うっ…」

傷ついた腕を庇うように抑え、蹲る。
これを見て、ヨークは再び威嚇する。
親愛するサイアンを傷つけられ、激怒しているようだった。
アルカンも奇声を上げながら、ヨークに再び襲いかかろうとしている。

サ「だめだって、言ってるでしょ…。聞きわけないなぁ…」

これにはサイアンも諦めがついて、肩に乗っていた蜘蛛の使い魔に投げかける。

サ「アデレイド。お願い」

主人の言葉を聞き入れ、蜘蛛の使い魔は飛び掛かった。
興奮冷めやらぬ蛇の使い魔を、8本の足で羽交い絞めにし、牙を突き立てる。
蛇は次第に動かなくなった。
彼女の唾液には、催眠作用があるため、使い魔を黙らせるには丁度いいのだ。
何故蛇の方にしたかは、理由は明らかだった。

リ「アルカンったら、また、ヨークに嫉妬してたみたいで。
お兄ちゃんが、いっつもヨークばっかり連れ歩くから…」

他の使い魔は、ヨークの立場を理解しているため、これほど攻撃的になったりはしないが。
サイアンは、傷ついた腕を後ろに隠すように、鷲の使い魔に手招きする。

サ「おいで」

アルカンは、少し戸惑っていたが、やがて、両足でとび跳ねるように、サイアンの許へやってきた。
差し出した手に頬ずりし、飛び上って、肩に乗る。
それから、腕を傷つけてしまった事をわびるように、クルクル喉を鳴らした。

サ「…大丈夫。かすり傷だよ。気にしないで」

サイアンは微笑み、彼の嘴の下を撫でくる。
アルカンは心地よさそうに喉を鳴らした。
そんな様を、ぐったり眠っている蛇と、疲れてへばってしまっている蜘蛛を拾い上げながら、リカは横見する。

リ「ほんと。その容姿で、人間以外からしかモテないのは何でなの…」




――――――――――――――――


という、サイアンの使い魔事情。
この中で、アデレイドだけはメスなんですが、タランチュラっぽいものと予想していただいて。
蜘蛛は正直あんまり好きではないのですが、ものは書きようですね。
自分で書いてて、なんか蜘蛛って可愛いくね?とか思ってしまった…(末期)
そしてひょんなことから、擬人化現象が起き、サイアンが総受けの餌食になるのは、目に見えた未来…。


 
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