漆黒の魔導師

□高慢の魔導師
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「貴様、正気か?」

連れられた路地裏にて、ルシエルは我慢できずに言った。

「私を呼ぶのだから、それ相応の事情があると思ったが、よもやそんなくだらんことで…」

「まあまあ、落ちつけよ。君は僕の大親友ってことになってるんだからさ」

「ふざけるな!!誰が貴様のような、自己掲示欲の塊を…!」

「ちょ、ひどくない?流石に凹むんだけど…」

「ルシェさん、謝ってくださいよ」

「お前…」

完全にラーファサイドに行ってしまったエヴァに、もうほとほと呆れてしまっているよう。

一方、事態を重く感じている者もいるようで。

「ラファエロさん、これはどういうつもりなんですか。
説明してください」

真剣なまなざしでラーファを見つめる。

クロガネの押しに、ラーファは少々気押されつつも、一貫して真面目に取り合おうとしなかった。

「説明って…。言った通りの事さ。今は、それしか言えない」

と、その時だった。

向こうから、黒い車体の高級車が3台走ってきて、目の前で停車した。

「ラーファ様!」

降りてきたスーツ姿の人物たちは、ラーファのガードマンらしかった。

「遅かったね。」

「すみません。ラーファ様を一目見ようとごった返す人たちで、渋滞がおきていて…」

「そう…、それなら仕方ないな。
彼らが、前に話していたルシエル・ルファーとそのご一行だ。
彼らも、僕のウチに一度招待したい。話があるからね」

一応、真面目に話すつもりはあるらしく、カイルは胸をなでおろした。

「ラン、ダン、彼らをお連れして。僕は先に行っているから。
それじゃあ、またあとで」

そうこちらに言うなり、一人だけ、先頭にあった車に乗って、行ってしまった。

「…どうする?」

「どうするもなにも」

「いくしかないでしょう!ね!ルシェさん!!」

と言うより、エヴァは、ラーファの家にいきたいだけなのだろうが。

もう頭が痛いルシエルだった。

そんな風に話をしていると、後ろから声がかかった。

「ルシエル・ルファーか」

サングラス、スーツ姿の男が言ってきた。

「ああ。私がそうだ」

男はしばらく、いぶしかしむように、ルシエルを凝視していたが、やがて

「なるほど。ヴァルハラは条件を飲んだようだな。
…それにしても、あんた。どうやって大魔導師になった?
細くて弱そうだ。まるで女みたいだな」

立て続けに起こる面倒。

あからさまな嫌味。

ルシエルは慣れた様子だったが、聞き捨てなかったのは、彼の弟子の方だった。

「あんだと!何十分も待たせやがった上、勝手のたまった癖に何言ってやがる!」

「公演が長引いてしまったのだから、仕方がないだろう。
ラーファ様はお前たちヴァルハラの魔導師とは違って多忙なのだ」

「違ってって何だよ!喧嘩売ってんのかコラァ!」

「ダン!何やってんのよ!」

この様子を見かねたらしい、同じく、サングラス、黒スーツを着た、今度は女が出て来る。

「確認が済んだなら、さっさと乗るように言ってちょうだい。
ラーファ様をお待たせするわけにはいかないのよ」

「そうだな。おい、そう言うことだ。
あんたらは4人だな。2人は向こうの、ランの運転する方に乗ってくれ。」

ガルルルルとでも言いそうなカイルを見かねて、エヴァは言う。

「私がカイルさんと向こうの車に乗りますね」

「ああ、頼む」

舞い上がっている中でも、それなりの気遣いは出来るらしい。

カイルをエヴァに任せ、ルシエルとクロガネは、目の前の車に乗車した。



 
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