短編集2
□なれますように。A
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おはこんにちこんばんわ。
玻璃間照明(ハリマ テルアキ)だ。
前回、廊下を走った罰という名の拷問から助けられ、ますます瑪瑙へ思い焦がれていたりする。
部活もないのに、朝の7時から正門で待ち伏せしているのはそのためだ。
そう、頭が駄目なら足を、前が駄目なら後ろを、下校が駄目なら登校だ。
正門から教室までという短い距離だが、どんな短い距離でも、一緒に肩を並べて歩くということが大事なんだ。
今は8時10分。
そろそろ瑪瑙も来るはずだろう。
ぞろぞろとやって来る学ランの群れを凝視し、俺は、瑪瑙を捜す。
…だが。
「あ!玻璃間くん、おはよう!」
…なんてこった。
気付かない内に、中峰が目の前にいた。
瞬時に昨日の生徒会室での出来事を思い出す。
「……ヒトチガイデス。ワタシハ、ハリマノスガタヲイチジテキ二カリテイルニスギナイ、ヒトガタウチュウジ…」
「ああ!待って!違うんだよ!」
言って、立ち去ろうとした俺の肩を掴む。
「おわあああああっ!?」
「おわあ、って…そんな驚かなくても…。
僕、昨日のこと謝りたいだけなんだ」
この言葉に、ほんの少しだけ警戒が薄れる。
「あの時は、取り乱してあんなことしちゃったけど、今はすごく後悔してる…。
玻璃間くんのことも考えずに自分勝手だった。
ごめん…」
深々と頭を垂れる中峰に、俺はちょっと動揺した。
でも、本当に反省してくれてるみたいだ。
「なかったことになんてできるとは思ってないけど、でも、少しでも許してくれるつもりがあるなら…」
言って、中峰は右手を突き出して
「友達になってくれませんか?」
…予想外の一言。
でも、何だか悪い気はしなかった。
中峰は、普通にしてれば、頭が良くて気が利くクラスメートだ。
昨日みたいなことは、後悔してるって言ってたからもう起こさないだろうし、
それに…、
俺も好きな奴に友達にすらなって貰えなかったら、相当辛いからな。
「いいぜ。よろしくな」
俺が手を握って返すと、中峰は、本当に嬉しそうに
「ありがとう」
笑って言った。