短編集
□拘束された激情
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南 柚木(ミナミ ユキ)といえば、今この学校じゃ結構な有名人だ。
簡単に言うと不良ってヤツ。
女みてぇな名前だが、俺はれっきとした男だ。
□□高校といったらこの辺じゃ、治安の悪さで名前が知られてる。
不良どもの溜まり場だと。
専ら名高いのは松林とかいうの。
松林は学校の不良どものボス猿的存在で、もはやその横行は留まるところを知らなかった。
だが、俺から言わせたら雑魚だ。
“南、お前も仲間になれよ”
そう言われたのが、もう二月前のことか。
俺は気に入らないから、
“誰がなるかよ”って返した。
そしたら、いっちょ前に殴りかかってきたから、全員返り討ちにしてやった。
松林と猿どもは揃って病院送り。
ここ二月、学校が静かなのはそのせいだ。
だからといって、俺がもてはやされるわけでもなかったんだがな。
知れ渡ったのは悪評だ。
“あの松林までもやった南”
と陰で噂されるようになった。
まぁ、もともと群れんのは好きじゃないから、
孤立してんのは前からのことだがな。
悪い噂も今に始まったことじゃねぇし。
だからいくら学校が静かになろうが、俺には関係なかった。
つまらなくて仕方がない。
だが、授業に出るつもりはさらさらない。
だから俺は帰ることにした。