WJ系短編詰込式

□Lは恋に落ちました。
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一番初めに目に付いたのは、彼女が月と話している時だった。
彼にしては非常に珍しく落とし物をして、それを気がついてくれたのが彼女らしい。

知らない人のポケットから落ちた鍵を拾い、少し走って。
人の目があるのに月を大きく呼んで。

何故か目が、追いかけてしまった。
話した事も、会った事すらない人。
今、初めて、見た人。





Lは恋に落ちました。






がしゃん、と音がして、Lの手からカップが落ちた。
月はそれに驚いて、背を向けて座っていた体を思いきり後ろへ向ける。

その音を出した本人はぼんやり何かを考えていて、どうやらカップを落としたことに気付いていない。
手がまだカップを持つ形のままである。


「……竜崎、」

「はい」

「竜崎」

「はい」

「カップ、落ちたぞ」

「はい」

「中身は?」

「はい」


あーもー何こいつ、みたいな顔で月はLを見た。
はい、しか返事が返ってこない。
しかもどうやらこちらの言葉は全て右の耳から左の耳へ流れているようなのだ。

月はとりあえず、紅茶が高そうな絨毯の上に零れていない事を確認して、放っておくことにした。
またくるりと背を向けて、パソコンに向かう。
かたかたとキーボードを打つと、画面が月の要望通りの情報を映していく。


「……あ」


Lが小さく声を上げた。

月は振り返らずに耳だけを傾ける。


「カップが……」


今 更 か よ!

月の叫びは届かない。
というか、どれ程意識を飛ばしていたのだろう。


「良かった、中身はなかったようですね」


お前が飲んだんだろうが!と口が開きそうになったが、月は頑張って我慢した。
しかし隣りでは、松田が酷く心配そうにLを見つめている。
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