Nightmare Project
□しろうさぎ
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しろうさぎ
真っ白いふわふわの毛。
ぴんと立った特徴ある耳。
優しげに細められた紅い瞳。
アリスはそれを泣きそうになりながら、必死に拒絶した。
小さな手で耳を塞いでぎゅっと目を閉じて。
何も見えない。
何も聞こえない。
喋るうさぎなんていない。
「アリス、遊ばないの?」
優しい口調と伸ばされる腕。
そっとふわふわした手がアリスの肩に乗った。
「しらない!」
けれどアリスは悲鳴を上げるように叫んで、その手を振り払った。
ぽてっと落ちる腕。
それをシロウサギはとても不思議そうに見つめて首を傾げた。
昨日までは楽しそうに遊んでいたのにどうして、と。
彼は傾げた首を戻して再びアリスに触れる。
じっとりと、小さな彼女に発生した歪み。
──あぁ、そういうことか。
シロウサギはアリスの歪みを自分の体に受け入れながら、紅い眼を閉じた。
おかあさんに、そんなものはいないとおこられたんだね。
彼は心の中でそうつぶやいて、アリスからそっと離れた。
小さな彼女はそれに気がついて肩を揺らしたけれど、顔を上げる様子はない。
可愛らしい顔を歪めて何かに耐えていた。
「……アリス」
シロウサギは小さく呼んだ。
「また、会いに来るよ」
耳を塞いでいるから、聞こえてはいないだろう。
だが、シロウサギには関係なかった。
アリスを歪みから守る為には、彼女の側にいるしかないのだ。
例え本人が嫌だと否定したとしても。
だから。
シロウサギは考えた。
なら、自分がこちら側に合わせればいい。
姿を変えて、アリスが話してもおかしくないものになればいい。
そうすればずっと一緒にいることができる。
アリスを守ることができる。
だから。
「また来るよ、アリス」
今度は、人として。
人として君の側に居続けようか。
そうやって彼は人になろうと思ったのだ