Nightmare Project
□悪夢のあとに
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ぽかんと口を開けたまま、少女は少年を凝視する。
多分頭の中では、様々なことを考えているのだろう。
だがそれがそう簡単にまとまるはずもなく、ただ時間が過ぎていく。
それを見かねたのか、少年はちょっと迷ってから、口を開いた。
「おはよう、ねえちゃん」
悪夢のあとに
「フレディ!」
レナは声を上げると同時に身体を勢い良く起こす。
そのままベッドから出ようとするが、それを予測していたのであろうアーウィンが、やんわりと押しとどめる。
そして彼はほんの少し、機嫌の悪そうな視線をフレディへと向けた。
この部屋へ来る前に言ったことを忘れるな、と。
フレディはそんな視線を受け止めて、軽く肩をすくめる。
「仕方ないよ、ねえちゃんが驚くのも。オレも驚いたし」
「ほ、ほんとにフレディなの?どうして?何があったの?」
レナはアーウィンに押しとどめられたまま、矢継ぎ早に疑問を口にした。
アーウィンがいなければ、フレディにしがみついていたに違いない。
「……結論から言うと、ねえちゃんのお陰だよ」
フレディはレナの側まで近づき、彼女の首の辺りを伺う。
普通のヒトなら、生きていられない程の傷を負っていた。
今はそこには包帯が巻かれていて、その下がどうなっているかは見えないが。
「わ、私の?」
「そ、ねえちゃんの、血」
レナはフレディをじっと見る。
観察と言った方が正しいかもしれない。
銃で吹き飛んだはずの後頭部。
今はどうにもなっていなかった。
「──あんま見ないでよ。照れるじゃん」
フレディの目が、レナの目を見る。その瞬間だった。
「良かった!」
「うわっ」
レナはガバッとフレディに抱きついた。
アーウィンは少し前に彼女から手を離していたらしく、何の邪魔もない。
その勢いに倒れそうになりながらもかろうじて耐えたフレディは、じっとりとアーウィンを睨んだ。こうなるのを分かっていて離したようだ。
「ねえちゃん、」
「良かった、ほんと、良かった!」
レナは声が聞こえていないのか、しがみついたまま何度も繰り返す。
フレディは困ったように彼女の頭を撫でて、そしてそのまま、好きなようにさせてやった。
レナの肌はひんやりとしている。
彼女が、ヒトでない証拠。
フレディは自分の身体がヒトの体温を保っていることに、今更ながらほっとした。
「あったかい」
その思考を読んだように、ぽつりとレナがつぶやいた。
「……安心するでしょ」
フレディの言葉にレナがそろりと離れていく。
けれど、二人の距離は近い。
「笑ってよ、ねえちゃん。オレ、結構心残りだったんだ」
「……うん、おはよう、フレディ」
レナの泣きそうな笑顔に、フレディも満足そうに笑った。
fin...
アーウィン、蚊帳の外。