WJ系短編詰込式
□愛しいアナタに花束を
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慣れた手つきで花を選び束にしていく。
こうやって花束を作り始めたのは、いつからだっただろう。
「えっと、女性に贈る花束が欲しいんですけど」
カウンターに嫌々いた私にそう注文してきたリー。
花の種類は何になさいますかと問えば、彼が恥ずかしそうに言ったのを覚えている。
「すみません、女性がどんな花を喜ぶかわからなくて」
どうして謝るのだろうと不思議に思った。
「そうですか。なら、こちらで作らせて頂きますね。お好みや、お好きな色はありますか?」
接客マニュアルは叩き込まれていた為、その通りに言うと、リーはほっとしたように私を見る。
「好み……?」
「はい。例えば落ち着いた、とか。派手に、とか」
例を上げるとリーは考え込んで、思い付いたような仕草をした。
そうかと思えば、恥ずかしいとばかりに口元を押さえる。
「えっと、じゃあ、可愛らしい感じで、ピンクをお願いできますか?」
白いリボンをかけながらぼんやりと思う。
私がこの人に、花束を贈る人がいるこの人に、魅かれてしまったのはいつだろう。
もうそれも、忘れてしまった。