WJ系短編詰込式

□片割れ
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妖一の顔が、目の前にある。
今だ良く分からない会話に、私は寝返りをうとうとした。
しかしそれは阻止される。

妖一に頭を掴まれたのだ。


「なにー!」

「何じゃねぇよ、人の膝に頭預けてんだから少しは遠慮しやがれ!」

「……」


ぼんやりしていた脳がゆっくりと覚醒する。
確かにこの天井の高さから言えば、床に寝転がっているはずだ。
たが、頭は特に痛くない。


「ひざまくら……」

「お前は特別だ」

「あくまのひざまくら」

「ぶっ殺されてぇのか?」


そう毒を吐く妖一の表情は、言葉とは裏腹に寒気がする程柔らかい。
何これ、世界滅亡のカウントダウン?
それとも私はこれから死んだりするんですか。

自分の片割れの顔をぽかんと眺めていると、視界の端にまもりが現れる。


「大丈夫?」

「ま、もりちゃん」

「あのね、部活の練習中に倒れたの。覚えてる?」


彼女は水を持っていて、心配そうに私を見る。
するといつの間にか私の手を握っていた妖一が、言い放つ。


「こいつが覚えてるわけねぇだろ。自分の風邪の症状もわからないような奴だぞ」

「そんな言い方……」


あ、またぼやける。
視界に映っていた二人がモザイクがかって、再び頭が思考をやめた。

会話が理解できなくなって、怖くなる。
ぎゅっと妖一の手を握り返すと声が返ってきた。



「おやすみ」



明日はきっと、矢が降ってくると思う。







妖一は私をおぶって帰宅したらしい

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