Nightmare Project

□その後の二人
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その後の二人



闇の中から引きずり出されて、一番最初に目にしたのはレナの姿だった。
まさに血の海と表現してもいい光景の中に、彼女はまるで、眠るように横たわっている。

フレディは震える手で、そっとレナへと触れた。――冷たい。

「どうし、て、」

自分は銃で死んだのだ。冥使になるわけにはいかなかったから、人のまま死んだはずだった。

なら、何故生きている?

フレディは頭を振って大きく息をついた。
そんなことよりまずねえちゃんを。いまだ震える手でレナを仰向けにし、怪我の様子を見る。

一番ひどいのは首の傷。
冥使の舌で貫かれたのかもしれない。そんな穴らしきものがある。
他にもいくつか傷はあったが、やはりこの血の海は首のものによるものだろう。

フレディは首の脈を確認してから自分の持ち物を探ろうとして。

「!?」

「ようやく気づいたか」

明かりの届かない空間から、アーウィンが現れた。
気配に全く気が付かなかった。

驚いたフレディはとっさに、レナを庇うような体勢をとる。
彼女が何であれ、自分
はこの女の子を守らなければならない立場にあると思うから。

その様子を見ていたアーウィンが、そっと眼を細めながら口を開いた。

「どうして助ける?我々がそう簡単に死なないのは知っているだろう」

聞き取りにくいが、確かにそう言った。
品定めするような視線に、フレディは眉間にシワを寄せる。
何故、そんなことを聞く必要があるのか。

「……そう、か」

あるとすれば。

フレディは自分の後頭部へと触れた。
銃によって吹き飛んだはずのそこは、今は傷一つなくなっている。

フレディは生かされたのだ。央魔の血によって。
普通なら有り得ない、あってはならないことだけれど。

「ようやく気が付いた、という顔だな」

「そりゃ、ね。起きて目の前が血の海だったら、自分の状況なんか後回しになるでしょ」

フレディは一つ息をついて、アーウィンへと背を向けた。

この冥使は見ていたのだろう。自分が甦る、その瞬間を。
何も手を出すことなく。何故そうしたのかは分からないけれど。

「オレ、生き返っちゃったわけか」

レナの傷の処置をしながら小さな独り言。
アーウィンは特に何の反応もせずに、ただ眺めているだけだ。

「っていうかさ、ねえち
ゃんの傷くらい処置してやんなよ。見てたんでしょ?」

「それくらいではレナは死なない。それに、大きな事象には対価が必要だろう」

フレディの言葉にそれだけ答えたアーウィンは、こちらを眺めるのも止めて目を閉じた。
アーウィン自身も、かなりの傷を負っているのだろう。一見平気そうに見えるのだが。

「……まあ、生きてて良かったよ。問題は山積みだろうけどね」

彼はフレディの言葉を肯定するように肩を竦めた。




fin...


これからが大変な二人。

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