学園BASARA
□5月:黄金週間を経て
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■不幸が棒に転じて
かーごーめー かーごーめー
かーごのなーかの とーりはー
いーつー いーつー でーやーるー
よーあーけーのーばーんーにー
つーると かーめが すーべったー
うしろのしょうめん
『だぁ〜あれぎゃああああああ!!!!!』
何故か頭に浮かんだカゴメカゴメを鼻で唄いながら冗談っぽく後ろを思いっきり振り返ったら物凄い近くに風魔君の顔があった
わざわざ身長を合わせてまで驚かせてくるとは、お主なかなかやりよるの!
『すすすストーカーめ!成敗してくれる!』
『何がストーカーだよ、移動教室なんだから行き先はみんな同じでしょうよ』
両耳を塞ぎながら首を横に振る風魔君を代弁するかのように隣に並んでいた佐助が口を開いた
『そんなのは言い訳に過ぎないね、ん?アレなんだろ、何か落ちてる』
廊下を曲がった所で目の前にキラリと光る何かが落ちている事に気付く
『鍵、かな?』
草冠の端に数字の零が付いたようなシンプルなデザインの鍵を拾った
いや、これは本当に鍵なのだろうか
鍵にしては作りがシンプル過ぎやしないか?
こんな単純な作りの鍵、今時漫画やアニメでも使われないよ
それとも逆に単純過ぎて複雑な鍵ばかりが普及している世の中では開錠するのが難しくなっているとか?
まさかな、自転車の鍵だってビニール傘の骨を突っ込んだら開いてしまうんだし、鍵としては失敗だよね
いや、でももしかしたら、これが伝説のどんな鍵でも開けられるというマネマネ銀を加工して作られた最後の鍵なのかもしれない
『最後の鍵拾ったった!』
すごいものを拾ってしまったと後ろを歩く風魔君と佐助に報告する
でも佐助の視線が違うところに向いてる事に気付いた
私の後ろに誰かいるの?
視線を追って振り返れば、曲がり廊下から何かを引き摺る音と共に一人の大柄な男が現れた
あれは五組の黒田官兵衛か?
視線を床に落とし何かを探しているかのようだった
便所サンダルなんか履いて廊下をうろうろするなよ
こいつに関わると不幸になるから近寄りたくないな、と思っていたら床に夢中だった黒田君がようやく私達に気付いた
しばらく無言で見てくる黒田君だけど、何故だか急に物欲しそうにこちらを見てきた
仲間にしてあげますか?
『だが断る』
『んなっ!小生はまだ何も言ってないじゃないか!』
何故じゃ、と短く呟く黒田君
叫ぶパターンの他にボソッと呟くパターンもあるのか、勉強になります
そういえば久しぶりに見たな
なんでも一年の石田君の嫌がらせでずっと薄暗い地下倉庫の掃除ばかりやらされてたとか
そもそも地下に倉庫がある事自体驚きだけど、今考えたらあの地獄の一週間の結果によっては、私が石田君によって地下に送り込まれてたかもしれないんだよな
地上に居られて本当によかった
一つ拝んでおくか
ありがとう、君は犠牲になったのだ
『おいコラ拝むな、小生は生きてるぞ!』
それにしても何で廊下を便所サンダルで歩いてるんだよ
というか便所サンダルより、後ろのソレは何?
『地下倉庫で掃除してるって聞いてたけど終わったんだ?えっと、その手についてるのは、何?』
『こ、これは…その、気づいたら、ついてたんだ』
『気づいたらついてたって…』
アンタどんだけ間抜けなの
付けられている間アンタ何してたのよ
しかも手枷の先にはご丁寧にダンプカーとかトラックに付いてる大きいタイヤが一つ
手枷に気付いた時やっぱり叫んだんだろうな、なぜじゃああああああって
『この手枷の鍵が学園内の何処かにあるから自分で探せと大谷に言われたんだが、アンタ知らないか?』
大谷って、まさか放送委員の私に月一で不幸占いを提供して下さっている二年のフェアリー大谷様の事か
手枷に重石のタイヤとか随分凝った遊びだなぁ
きっと大谷君は黒田君の何かに加虐心を揺さぶられるんだろうな
『鍵?あぁそれならさっき孔怜が…』
佐助が私の持ってる鍵を指さして口を開いたその時だった
キーン↑ コーン↓ カーン↑ コーン↓
キーン↓ コーン↑ カーン↑ コーン↓
『マズイ!もうそんな時間ッ!?黒田君ゴメン、移動教室なんだ、またあとでね!』
『あぁ!待て!そんな!鍵を持ってるなら置いていけ!なぜじゃああああ!』
それから黒田と孔怜は一学期が終わるまで一度も会う事はなかった