学園BASARA

□5月:黄金週間を経て
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■教習車でドリフト走行



はい、こんにちは

私は今自動車教習所に来ています

高校三年生と言えば十八歳、普通自動車の免許取得が法律で認められている年齢ですよ

学校側も運転しなければ取得してもいいって言ってることだし、そりゃ取れるもんは取るでしょ

もともと車好きだった私にとって教習所の勉強は学校の勉強と違って全く苦にならない

だからここ最近は普段の授業は寝て体力をセーブ、放課後温存した体力を利用して毎日車の勉強を頑張ってます

ちなみに十八歳じゃなくても、修了検定までに満十八歳以上になっていれば通うことができるんだよ





ここの教習所は家からも学校からも近いし無料で送迎バスまで出てる

しかも近くの給食センターと契約してるらしく教習生は食事代がタダというから驚きだ

更に教習車はとってもかっこいいスポーツカーや高級セダンばかり

学生割引で料金も安いという事でここに決めた

もちろん親ローン発動したけどね

『えっと学科教習は二階の、今日はこの教室かぁ』

教習所の授業は車を運転する技能教習と机に座って勉強する学科教習の二つに分かれている

あと教習所に入るまでは知らなかったけど、仮免許を取るまでを第一段階、仮免許取得後は第二段階って言うみたい

入所したての頃は毎日車運転しまくるぞって意気込んでたんだけど、第一段階では一日に受けられる技能教習の教習時間が二時限まで、第二段階では三時限までっていう風に法律で決められてるんだって

私はこの前仮免所を取ったから第二段階なんだけど、今日は他の生徒さんの予約でいっぱいだったから車には乗れないみたい

だから代わりに学科教習を受けようと思って二階に上がったんだけど、席についてる生徒さんが一人ってどういうこと?

オールバックで頬に傷がある、いかにもアッチ系のお兄さんが教習所にいたら、ああいう人もちゃんと教習所に通って免許取るんだって考えちゃう

てかあの顔どこかで見たことがあるんだけど





『…おい神宮寺、俺の顔に何か付いてるのか?』

私服着てるから一瞬誰だかわからなかったけど、ドスの聞いた声と射殺すような視線で思い出しましたありがとう

『片倉君も通ってたんだ』

『あぁ』

私は片倉君の隣に座りながら言った

いやぁまさか片倉君が教習所に通ってるなんて思ってもいなかったなぁ

今まで授業が一緒になったことなかったけど仮免許は持ってるみたい

教習所は年齢も職業もバラバラないろんな人たちが来る所だから、知り合いに会えるとちょっと嬉しい気分になる





彼の名前は片倉小十郎

見た目はアッチ系の人かと思うくらい怖いけど、私と同じ学校に通う列記とした高校三年生、クラスは隣の二組

怒ると怖いけど本当はとても優しいのを私は知ってる

学園内の敷地を借りて片倉農園っていう畑をやってる、野菜を育ててる人に悪い人はいないんだよ

その丹精込めて作ってる野菜がまた瑞々しくてとっても美味しいって評判なんだ

実は時々分けてもらってるんだよね

『この前のごぼうありがとう、きんぴらにしたらとっても美味しかった!残りはサラダにしたんだよ』

お母さんが、ね

『そりゃあよかったな』

ごぼうは栄養自体はあまり無いが繊維が多いから整腸作用に効く、と教えてくれた

暗に私の便秘を心配してくれてたんだろうか、と疑ってしまうが本人に言うと絶対に怒られるので言わないでおこう





野菜のお礼を言った後は教習所に入ろうと思ったきっかけとか、学校の事とか、伊達君の事とか、他愛のない話で盛り上がった

教室に入ってしばらく経つけど、先生も生徒も未だに誰も来ない

そんな中二人きりの状態が続いても話のネタが尽きないなんて私たち結構相性いいんじゃない?

片倉君の意外な一面が見られて、今日は本当に良かった





それからしばらくして、車の運転の話になった

『ホント運転楽しいよね、こうギアを入れ替える時なんかは、あぁ私車を運転してるんだぁって思う』

『……、…』

あれ、頬杖付いてそっぽを向いちゃった

私ばかりが話過ぎちゃったから疲れさせちゃったとか?

それとも私の運転の話には興味がなかったとか?

車がそこまで好きじゃないっていう可能性もあるな

ほらいるじゃん、車は移動するだけの道具だっていう人

乗れれば何でもいいとか言っちゃう人

その人がそれでいいならいいんだけど、私は断固として拒否する

私は車が好きで、車の運転も大好きだから、そんなことを言う人はちょっと理解できないのだよ

でも現に横に座ってる片倉君がそっぽを向いたって事は、車の話にあまり興味がないということだろう

せっかく今まで楽しく会話できたのに残念

『片倉君ごめんね?ちょっと夢中になっちゃって…』

『ん?あぁ、いや大丈夫だ、ちゃんと聞いてる』

不機嫌かと思いきやこっちを向いた顔は意外と普通の表情

つまらなさそうに見えたのは気のせいだったんだろうか





そのあといろんな話を迂回して、結局車の話に戻ってしまった

気付いた時には片倉君の顔は少し曇ってて、まぁいいや続けちゃえって半ばノリで話を続けてた

『そんでクラッチ切るの忘れて踏切内でエンストしちゃった時はさ、ほんとびっくり慌てちゃってさぁ』

『……、…』

するとどうだろう

また頬杖付いてそっぽを向いてしまった





まさか

まさかなのか

本当にその、まさか、なのか





怖くて聞けない



『あの、片倉君って…もしかして…』










『…俺、AT限定だから…』











その後、いくら待っても先生が来ない事を変に思った片倉君が先生を呼びに行った

連れてきた先生曰く、急なスケジュール変更で教室に入る前に生徒たちに休講を知らせていたらしいが、既に教室に入っていた私たちには気付かなかったらしい

お詫びという事で私と片倉君は先生の運転する車に乗って家まで送ってもらった

もちろん教習車で




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