十五夜
□4の奇跡
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黒子が私に挑んできてから三日がたった。
その三日間、私はバスケ部のRと話をしていない。
同じクラスの黒子と青峰ともだ。
『・・・・帰ろう。』
ほかの生徒が皆部活にいそしんでいる中、私は一人で帰る。
まだ部活決まってないし。
あの人たちが私を本気にさせてくれたら男バス入るし、無理だったら、・・・・剣道かテニスだな。
帰宅部でもいい。
『・・・・・なんだこの臭い・・・』
ただならぬ臭い。焦げたような、溶けたような・・・とりあえず、言葉にできない。
『ここは・・・家庭科室の近くじゃぁあるまいし・・・』
今私がいるのは体育館裏。いつもここから帰っている。なんとなく、この場所好きだから。
『体育館からか・・・・?』
ありえないとは思いつつも、体育館に足を運んだ。
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「みんな〜ドリンクできたよ〜」
「・・・・・ぉぅ」
・・・・あれか。この臭いの正体がわかった。
桃井の作ったドリンクか。
「あ、・・・りがとう・・」
首相の赤司でさえも顔が引きっつっている。
青峰なんかは、本当にひどい顔をしていた。
「ちょ、さつき!こっち近づけんなっ!!」
「ひっひどい!頑張って作ったのに・・・!!」
「そうですよ青峰君。桃井さんは頑張って作ったんですから飲んであげなきゃですよ」
「お前が飲めよなんならよぉ!」
みんながみんな焦っていた。ほかの部員も、巻き込まれないよう練習に身を預けていた。
「僕はあんまりのどが渇いてないんで・・・」
「頑張れ青チン〜」
「人事を尽くすのだよ」
「だからなんで俺が飲むことになってんだよ!」
みんなで喧嘩を始めた。灰崎なんかは、もう空気だ。
「はい、大ちゃん!」
「うえっ・・・・だからなんで・・・」
青峰が鼻をつまむ。相当ひどいのか。まぁ、外まであの匂いが強く臭ったんだ。近くで嗅いだら悲惨なものだろう。今だけ同情してやる。
「さ、一気に!」
「一気かよ!無理だ!ぜってぇ無理!!」
よし、あの技を使って・・・・
『ちょっとそのドリンク貸せ』
「ええっ?名無しさんちゃんっ?」
「なぜここに・・・・!」
私は黒子が使う技で桃井の背後に立っていた。
みんな私がここにいること驚いていたが、私は気にせず続けた。
『桃井、このドリンクの材料はなんだ?』
「えっ?え〜と・・・人参となすとカステラとクッキーと・・・イワシと・・・スポーツドリンクかな?」
「スポドリアンだったらそのまま渡せ!」
「だっだって!栄養あるもの混ぜたほうがイイと思って・・・!」
二人ががみがみ言い合いを始めた。
『ガングロ、桃井、やめろ。ほかの部員の練習にひびが出る。』
「ちっ・・・」
「・・・・」
桃井は頬をふくらまし、青峰はぶつぶつ言い始めた。
『誰もドリンク飲まないのか?』
「飲んでくれない・・・」
『じゃぁ一つ、俺にくれ』
えっ?、と言わんばかりの空気になった。
Rだけじゃない。ほかの部員もだ。
「ちょ、おま、腹壊すぞ?」
『なんだ灰崎、お前腹壊したことあんのか?』
「・・・・何度か」
さー、と灰崎の顔から血が引く音がした。
そんなにもひどいのか、桃井のドリンク。
「酷いのはドリンクだけじゃない。料理全般だ」
「ひっひどい!」
きゅうに赤司がしゃべりだした。
『これを毎日飲んでるやつはいるのか?』
「いつもじゃんけんで負けたやつが飲むのだよ」
『ふぅん』
私は桃井のドリンクを片手にもち、中身を見つめた。
『(すごい臭い。)』
「おら、すげぇあいつもこまってんじゃねぇかさつき」
「うっ・・・むっ、無理に飲まなくていい・・・・え?」
桃井の言葉が終わる前に私はドリンクを一気飲みした。
周りの奴らの目は点で。何気にウケた。
「(の、飲んだっ・・・・・・!!)」
「(すすげぇっ・・・・!)」
「(あのドリンクを一気に・・・・!)」
「(すごいな〜・・・・・っ!)」
『ぷはっ・・・・桃井、はっきり言う、不味い』
「(゜Д゜)Σ」
『赤司、部室に案内しろ。桃井もいっしょに』
「え・・・いったい『早く』・・・わかった。案内しよう」
私は、バスケ部の部室に案内された。