三日月

□九球目
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「名無しさん・・・・」



『ジャッカル、あな「手当てが先じゃ」ちっ』


ジャッカルは私の傷口を丁寧に消毒して言ってくれた。



仁王は・・・・自分でしてる。




「これで・・・」


『ありがとジャッカル…それと…仁王も』

私は二人にお礼を言い、この場から去ろうとする。

「待て、どこに行くんじゃ?」


『部活よ。あんたたちも行かないと、真田に殺されるよ…?』


ハハハ、と笑う。

すると仁王が険しい目つきになった。


「…無理に笑うな。」


『え…』


「顔、ひきつっとるぜよ」


仁王がさらに険しい目で私を見る。

「それに…何で俺苗字よびになっ取るんじゃ?許可した覚えないぜよ」


『…別にイイでしょどう呼んだって』


「よくないナリ」


『関係ない。』

「真田も同じように思っちょる。うっとおしいぜよ。もとに戻しんしゃい」


『いや』


「ほう…」

彼はニヤ、と口角を上げる。


「お前さん、心身ともにきつそうじゃな…助けてもらいたかったらそう素直に言えばいいのに…」


『助け?はっ!ばかばかしい!そんなもの自分からは行かないわよ!!』

「なんでじゃ…?」


『っ、それ…は』


それは、彼らを巻き込みたくないだけで。

巻き込めば、ろくにテニスなんかできなくなってしまう。

そんなの、死んでもイヤ。

せめて、仁王と真田、ジャッカルのテニスだけは守りたい。


「お前さんは…かなりの不器用さんじゃのぅ」


グイッ、と腕を引っ張られ、強引にジャッカルと仁王の胸元に引き寄せられる。


『な…に、して』


「バカ野郎ッ、意地はんなよ!!」


『ジャ、カル?』


「俺らをかばっていること、バレバレなり」


彼らは私の手をぎゅっと握る。

その手は温かくて。自分は感じたことないぬくもり。


私はその優しさに甘えそうになる。


『はなして…』


「離さん…お前が本音を言うまで…」



やめて…そんなこと言わないで…


そんなこと言うと…甘えてしまいそうになる…


『離し…てよっ』


「辛いんだろッ!?痛いんだろっ!?平気な振りしやがって…!!」


「一人で傷つくなんて…許さんぜよ…おまんさんは一人で復讐とか考えてるじゃなか…?
そんな冷たい心持ってないくせにそんなことすんじゃなか…!!」



あぁ…駄目だ、と心の警報が響く。


私の復讐は、彼らを傷つけていた。

私は、一人で荷を負わなくていい。彼らはそれを望んでいる。


私は彼らの言葉に、甘えてしまった。



『辛いよ…痛いよぉッ…!!』


「名無しさん…!!」


『大好きだったみんなが…みんながッ、テニスする手でっえ!!わた、わたっしがぁ!!みんなのテニスを…、テニスを奪ったあぁあ!!っぅうぅ!!』


「違う…!お前さんのせいじゃなか…ッ!!」


『ジャッカルや…!!雅治…、弦、一郎たちが!!傷つくのは…嫌っ、なのぉお!!ぅうあ、こっれ以上、悲しい思いするのは…いやぁッ!!
ごめんなさいぃいぃぃいぃ…』


彼らの胸の中で思わず泣いてしまった私。

彼らは私の手を強く握りながら、一緒に泣いてくれた。


『本当に…ごめ、なさい…』


「おまえのせいじゃねえ…あの女が悪いんだ…」


「ジャッカルの言うとおりぜよ…おまんはずっと頑張ってた…俺らの…最高のマネなり…」


『ふぁぁん…ッ!!ひくっ、うううぅぅうぁ』


優しすぎるよ…二人とも…ありがとう…



「さぁ、泣き止むんじゃ…それ以上泣かれると…襲いたくなってしまうからのぉ」



『なっ…』


「まぁ…泣き顔もかわいいが…」


『ジャッカルまでぇ!』


バッと二人から離れ、荒々しく目をこする。


「…名無しさん、信じてくれ。俺、ジャッカル、真田は味方ナリ。絶対を付けてもいい」



『うん…うんっ…!!』


「遠慮なく頼れ!俺らでできることなら、なんだってするからな!!」



『ふぇぇえぇぇん…優しすぎるよぉ…』


またもや溢れ出す涙。うれしい。信じるって、こんなにも素晴らしいことなんだ。



「安心しろ、お前さんの復讐には付き合うぜよ…俺の姫さんを傷物にしてくれたからの・・・」


「黒ッ…」

ジャッカルが引く。

「ちなみに真田もじゃ。当たり前だ、落とし前はつけさせてもらう、と言って張り切ってたぞ」


『わぁ…コワ…』


それでもうれしかった。弦一郎が信じてくれたこと。


「真田はお前さんの性格をよく知ってる…名無しさんがいじめをしないことくらい手に取るようにわかっとるはずじゃ」


『ふふっ、そうだね…!って、もうこんな時間…さ、部活いこ?』

回りには誰も居ない。



今は、放課後で各自部活等にいってるから。



こいつ等も私も、そろそろ行かなければ三人そろって真田の鉄拳食らうことになる。


もう、後戻りはできない。




復讐の準備も、整い始めてきたんだから。


余計な事は考えない。



私の意がままに・・・動くの・・・。






覚悟が必要となるわよ・・・・テニス部さん?

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