十五夜
□6の奇跡
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―ピィィィィッ―
ブザーとともに青峰が走り出す。
私は今、敵側のゴール下に立っている。
青峰が、今、すごい勢いで私の横を通り過ぎた。
「・・・!?何もしてこねぇだと・・・っ!?」
青峰が驚きながらもボールをほった。
『さぁ、晩餐会の始まりだ!』
―ヒュッ、ダムッ―
「「「「「「!!!」」」」」」
この場にいる全員が驚いた顔をする。
そりゃそうだろう。私がゴールにはいる直前のボールを取ったんだから。
『・・・・俺の断りもなしに何ゴール消えようとしてんだァ・・・?青峰君よォ』
―ガンッ―
私が、ダンクをきめる。
『ここはお前らの領域などない。コート上すべてが私の領域だ。
お前らがどれだけ足掻こうと無駄だ。』
青峰が絶句する。
『青峰、貴様は強い。俺が対戦してきた中でも上位のほうだ。だが、それでも勝てない。一人じゃな』
「・・・・・・?」
『お前ら、何人でバスケしてんの?青峰、さっき一人でバスケしていたようなもんだろ。それじゃぁ俺をぬかすなんて無理な話だ』
「・・・・名無しさんさんの言いたいことがわかりました」
「ああ。俺もだ」
黒子と赤司は相談を始める。きっと、私の伝えたいことが伝わったんだろうか?
まぁ、どうでもいいが。
『さぁ、始まったばっかだぜ?楽しんでいこうぜ』
そう、試合は始まったばっかり。
貴方たちが屈辱を味わうのも・・・これからよ。
―ガンッ!―
「クソッ・・・とめられねぇ・・・」
「それに・・・だんだんと破壊力も上がってきています・・・」
ぎしぎしとゴールが悲鳴を上げる。
「はっ・・・っ!」
『おっ?もう息切れか・・・?駄目だなァ・・』
―ガァンッ!!−
「また威力がっ・・・!」
『クククク・・・おいおい、もう終わりか?』
自然と、嫌な言葉が出てくる。
なぜ、私はこんなことしか言えないのだろう。
心で思っていることが口にできない。
こいつらとバスケを素直にすればいいのに、体が拒絶する。
不便な体だ。
「黒子ォ!!」
「っ!青峰く・・・」
『そのボール、もーらい』
黒子が青峰にパスを出す。だが、そのボールは青峰には届いていない。
私が、奪ったから。
「くっ・・・!」
『点、いただいたぜ』
シュッ、とリングにあたることなくネットをくぐる。
初めはこの感覚が好きだったんだっけ?
あのころが、懐かしい。
『もうそろそろ灰崎と赤司チェンジしたほうがいいぜ?』
「・・・?っ、まさかっ・・・」
『ああ、そのまさかだ』
みんなが灰崎のほうに視線を送る。
「灰崎?!」
「・・・・・・・」
「っ・・・五感を奪われたか・・・・」
赤司が悔しそうな顔をする。
「・・・・僕と灰崎を入れ替える」
「・・・・・!!」
ここにいる奴ら全員が思っているだろう。
こいつには勝てないって。
一人がやられた以上、二人三人とやられていく。
その事態は、彼らにとって最悪の事態と言えるだろう。
『・・・・赤司、準備はいいか』
「あぁ・・・・大丈夫だ」
そして―――
試合が再スタートする。