十五夜

□7の奇跡
3ページ/4ページ



--------------------------------------



「調子こいてすいませんでした・・・調子こいてすいませんでした・・・・・・・。」


『金輪際、俺に同じようなことしたらはっ倒すかんな』


「あら、お口が悪いわよぅ名無しさんちゃん?」



『狙うは、一点のみ』


「おぐぁ!」


光輝の腹にパンチを決める。
端からさつきの顔がちょこんと見える。
さつきは、私にこう問いた。


「・・・・というか、知り合い?」


『こいつなんかしらん』


「ひどいっ!昔光輝ー!って呼んでくれたぁっ!!」


『ハエは死んでろ』


どごっ、とパンチが決まる。


『まぁ、近所だったからな。たまたまだ。仲もそんなによくない。』


「え?でも名前で呼び合うくらいなら仲悪いとは言えないよね?」


『さつき、いいか?こいつはな、見た目だけの男なんだ。口先だけで何もしない。有限不実行だ。』


「え?でもバスケ上手だよ?」

さつきがそう言い放つ。・・・・バスケ?・・・・負けた・・・?

何か引っかかる。・・・・・・。


『・・・・そういえば・・・・』


俺はさつきの話を遮り、光輝のいるほうへ足を送った。


『思い出した。お前、征十郎に負けたんだってな?』


「ちゃちゃちゃちゃうねん!誤解や!」


『なぜに関西弁使ったし。それより、負けたんだな?』


「負けてないッ」


『今のバスケ部の主将は?』


「うっ、せ、征十郎です・・・・」


光輝は項垂れる。

そして、冷や汗をかく。

『この際、征十郎たちがいようがかまわねぇ。お前、ゴールしたに立てや』


「えぇっ?あれやるの!!?」


『負けた罰だ』

「いっ、痛いだろあれはっ」


『大丈夫だ。痛くない』


「俺病み上がりだから!」


『また入院すればいい』


「そういう問題じゃねぇだろ!」


ぎゃーぎゃーと騒ぎあいが始まる。

それを、征十郎たちは黙ってみていた。


「仲いいなぁ・・・」


「お似合いかもしれんな・・・・」


『やめろっ!こいつと俺がお似合いだとっ?!大輝に話しかけるのと同じくらい嫌だっ!』


「だからっ!殺すぞてめぇ!」


「大輝やめろ!お前の命が危ない!!」


必死に光輝が叫ぶ。


『あーもーうるせぇな!!お前はいつまでたってもガキだ!!』


「どこがだよ!だいたいなっ!お前が変わりすぎてんだよ!何?いつの間に自分のこと俺だし?口数少なくなってるし?一匹オオカミだし?なんなんだよお前!完全なる男じゃねぇか!」


『男でかまわん!むしろ光栄だ!!』


「そこだよそこ!お前昔はそんなこと言わなかったろ!口が悪いんだよお前!」

『うるっせぇな黙れ!俺に一回もバスケ勝てなかったくせに!』


「かー!!なんで今バスケの話になんだよ!」


『今バスケの時間だろうが!!大体、あいつらに聞けば予定よりかなり遅れてきたそうだな?先輩の立場としてお前終わってんだろ!』


「そ、それはなにも言い換えせねぇけど!とりあえずお前、・・・・なんでそんな変わっちまったんだ?」


急に、光輝が静かになる。いきなりこういう雰囲気になられると、私も困る。


『・・・・俺は別に何も変わってな――』


「いーや、変わったね。さっきスルーしたけど、スゲー変わった。」


しっかりとした目で私を見据える。でも、その目はどこかさびしげで、不安げだった。


「・・・・ずっとこいつらだって憧れてた。毎日毎日練習後お前の出てる試合のビデオを見てるほどにな。その時のお前は、今と全然違ったはずだ」


『・・・・・っ。』


最早言い返せる言葉も少なくなってくる。

どうしよう?征十郎たちもいるのに。


『・・・・お前、何か勘違いしてるぜ?』


「・・・・何?」


『俺が変わったんじゃない。周りが変わっただけだ』


そう、私は何一つとして変わったことはない。

他人が、変わりすぎてしまったんだ。


『俺は何一つ変わっているものはない。むしろ、幼少期から時間は止まっている。』


「どういう意味?」


『・・・・さぁな。今は教えられねぇ。征十郎たちがいるからなおさら。・・・・じゃな』


ふ、と光輝たちに背を向け部室に向かう。


私が去った後も冷たい空気が流れていたに違いない。

いつものうるささがないのだから。


・・・・・また、面倒事が起こるか・・・。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ