十五夜
□9の奇跡
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『・・・・・・・・・』
こんにちは。あ、違った。おはよう。
私は今不機嫌真只中です。
なんでかって?
朝練終わって今から教室に向かおうとしてる最中、廊下一面に男一人と女大勢が邪魔をしているからだ。
私がここで立ち止まってからなんだかんだ言って10分は立っている。
朝練終わって疲れてんのになぜ同じ場所でこんなに立たされなきゃいけないんだ。
しかもその男が同じ一軍(最近入ったばっかり)の黄瀬涼太だし。
どいて、とかいうにも女の壁があって言えない。
もう少しで授業始まるのに。こいつら授業間に合うのか?
もちろん俺はサボるけどな。ただ屋上へ向かう道なんだよここ。
「黄瀬君わぁーどんな女の子が好きなのぉー?」
KI☆MO☆I
ありえねー!!マジ気もいんすけど!!
やばい。私のキャラが崩壊気味。
でも本当に気持ち悪い。それ通り越してキショイ。
香水のにおいキツイし、ケバイし、いいとこなしだ。
加えてあの語尾何?ウナギのにめりと同じ位気もい。
いいか?今は清潔感あふれる女子が人気なんだぞ?お前らみたいなのは今ドキじゃねぇーんだ。
それと黄瀬。アイツの顔がどうも気にくわん。
確かあいつモデルやってると耳に入ってきたな。あれはモデルスマイルか?
彼女たちは気が付いていないが、結構つらそうな顔をしている。
―ブブブ―
ケータイのブザーが鳴る。きっとテツヤ立ち方だと思う。
私が嘘で今日は授業出るとか言っちゃったし。
遅いからメールよこしたんだろ。
どれ、そろそろ・・・・・・・
『おーい、邪魔なんだけどブスども』
もう女じゃないかも私。女共はこちらを向いてにらみつけてきた。
「ちょっとぉーそれどういうこと?」
『あら?そのまんまじゃない?ブス』
怒りマークがつく。相当ムカついてんだなこいつら。
『お前ら授業始まるけど?あぁその頭じゃ授業受けても内容頭に入んないか』
「てんめっ!!」
『おっ?化けの皮はがれてきたな。怖いわぁー・・・つかどいてくんない?さっきっからすっごい迷惑してんだけど』
ほんの少しだけ彼女たちをにらむ。すると、それに怖気づいたのか知らないが、私が通る道を開けてくれた。
『最初からこうしてればいいのに。バーカ』
毒気づく。たぶん、彼女たちの腹の中真っ黒だろうな。
『あんたもあんただよ黄瀬。あんた、こういう風に囲まれてるの慣れているだろうけど、私にはバレバレ。黄瀬、あんた、一日中その調子でいるつもりならいつか倒れるよ』
「え・・・・・」
『本当の黄瀬涼太"はいつ現れるの?』
「・・・・!!」
それだけ言って私は去って行った。
そのあと「あいつが黄瀬君の何知ってるのよ・・・」とか、「うざー・・・なんか黄瀬君のこと全部知ってるみたいなこと言ってさー・・・」とか彼女が口にしていることが聞こえた。
本当、ひどい性格。
『あーだるい・・・・・』
そこから私は屋上で意識を手放した。