テニスの王子様

□勿忘草
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誰も居ない部室。
窓から差し込む夕日が、二人の別れに少しだけ淋しさを加える。

あの人が居る最後の部活…そして、最後に二人っきりになった部室。

「おチビとこうやって話すのも久しぶりだよね…」

そう言う先輩はいつもの彼で。俺はいつもの日常と勘違いしてしまいたくなる。
これで、最後なのに。

「先輩がずっと部活に来ないからでしょ…」

淋しさで揺らぐ心を否定したくて、俺は反抗的に言い返した。

「しょうがないじゃん。受験勉強忙しかったんだもん」

拗ねたように言って先輩が笑った。
大好きなその笑顔が今は俺を苦しめる。

ーーーー笑わないで。その笑顔が脳裏に焼き付いて離れないんだ。

見ていられなくて俺は視線を反らした。
沈黙が満ちてより彼の存在を思い知る。

「おチビ。……淋しくなる」

夕日を眺めながら言った先輩の背中が少し哀しかった。
俺は何も言えず彼の姿を見つめていた。

「忘れないでね、俺のこと…」

急に振り返りまっすぐに俺を見据えて言う先輩は今まで見たこともないくらい真面目な表情だった。
そしてそれは俺の心を見透かした言葉で動揺してしまう。

「忘れさせてよ」

「ダメだよ」

「なんで?」

「俺がおチビのこと忘れないから…」

こんなに切なくて、悲しくて、辛いのに忘れさせてくれない意地悪なあの人の言葉がとても嬉しくて…

「だから、俺のことも忘れないで…」

ゆっくりと大好きな腕に包まれる。
大好きな温もり、大好きな匂い…。

時間は常に流れていく。それに伴って出会いと別れを繰り返す。
でも俺がアンタと共有したかけがえのない時間が確かに存在したことを俺はずっと忘れないよ。

「ありがとう英二先輩。さよなら…」

END

最後まで読んでいただきありがとうございます。
そしてまたしても菊×リョ(笑)
意外と私は菊×リョが好きなのかもです(笑)
まぁこれは初恋なのかなぁという感じです。
切なくしてみました。ちゃんとなってれば良いな。。
 

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