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□アイツが俺を構う訳*※
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「まーた書道なんてしてるの?」


神宮寺は荷物を自分のソファへと投げると俺の方へと歩み寄る。


「ホント好きだねぇ。」


「………。」


俺はアイツの足音を背中で感じながら筆を置く。


「…貴様には関係なかろう…」


「関係はないけど、いつもやってて飽きないのかなぁって…素朴な疑問?」


勝手に人のスペースに入ってきた神宮寺は俺のすぐ側に座る。


「…飽きるも何も…精神を統一させる修行の1つだ…」


「修行ねぇ。」


俺が答えてもアイツは自分の方へ戻ることなく俺の書いた物を眺めている。


「…貴様の質問には答えただろう…さっさと自分のスペースへ戻れ。」


「え?別にいるだけなんだから良いだろ?」


「…気が散る…邪魔をするな。」


そう言いアイツを睨み付ける。
アイツはキョトンとした顔でこちらを見る。
さっさと戻れ。


「修行の1つなんだろ?だったら俺が側にいたって集中出来るようにならなくちゃ。」


「………。」


ヘラヘラと笑顔でそういうアイツに苛立ちを覚える。
俺に構うな。
俺のテリトリーに踏み込むな。


「集中力を高めたいんだろ?だったらやってごらんよ。」


そう鼻で笑うアイツにいい加減嫌気がさした。


「…貴様いい加減にしろ!!俺が憎いならいちいち俺に構うな!!」


「!」


「憎いと恨んでいるなら俺に構わなければよかろう。いちいち色々と言ってきおって。」


「………。」


アイツの態度、無遠慮な行動に俺の心は限界だった。
言いたいことと、言いたくないことがどんどん口をついて出ていく。
もう…どうにでもなれ…


「俺は貴様と馴れ合うつもりなどない。だから構われるのは迷惑だ。」


「………。」


「それとも、貴様。俺のことが好きなのか?よく言うな、好きな相手ほど苛めたくなると。貴様のそれは、俺に対する愛情の裏返しか?」


アイツが昔、俺を突き放したように俺もコイツを突き放してやる。
そう思い怒りを煽るような言葉を口にした。
しかし、アイツは一度うつ向かせた顔を上げ、真っ直ぐに俺を見つめる。


「…そうだよ…」


「…は?」


「…お前が…好きなんだ…だから構いたいのかな…」


「………。」


神宮寺の言葉に、俺の思考は停止した。



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