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□痕を残して*
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とあるマンション。
この部屋にはアイドルとして活躍している聖川真斗と神宮寺レンが暮らしている。
たまたま休みが一緒だった2人は特に出かけることもせず、家で過ごしていた。
真斗が作った昼食を食べ終えて、2人はリビングのソファでテレビを見ていた。
レンはやけに真剣にテレビを見ていて、時々時計をチラチラと気にしていた。
その様子に疑問を感じた真斗は首を傾げた。
「何か見たいものでもあるのか?」
「んー見たいっていうか、見なきゃいけないもの?」
「見なきゃいけないもの?一体何を見るんだ?」
「そろそろだから、見てれば分かるよ。」
また時計を見たレンはそう言った。
真斗はますます分からなくなったが、レンの言う通り待つことにした。
するとレンが"あっ!コレ!"と声をあげた。
首を傾げながら画面を見ると写ったのは上半身裸のレンだった。
「?」
そのレンの周りに女性数人がやってきてレンの体に赤い口紅の跡を残してゆく。それは男性向け化粧品のCMで、女性に好かれる美しく色気のある体に、的なイメージのCM。
15秒間のそのCMを見ていた真斗はみるみる不機嫌そうな顔になる。
仕事だし、レンにはこういうのが向いているというのは分かっているが、さすがに体にキスをされているのを見ては嫌な気分になる。
「この間撮ったCMなんだけど…どう?」
真斗が不機嫌になっているのを分かっていて、レンは敢えて感想を尋ねた。
「どう、とは?」
「色々感想、あるだろ?」
「…特にないが。」
真斗は明らかに怒っているような口調で言うとお茶を啜った。
「ないことはないだろう?見て何か思わないのかい?」
「…お前に合った良いCMだったな。」
「それだけ?」
「…あぁ。」
レンの問いかけに真斗は短く返すとまたお茶を啜る。
「もっと構図とか演出とか、そういうことを聞きたいんだけど。」
と更に尋ねると真斗は眉間に皺を寄せ、不機嫌さを色濃くした。
レンのことを横目でチラと見て直ぐに視線を戻すと無言でテレビを見つめる。
「…じゃあ質問を変えるよ。お前はさっきみたいなCMに俺が出ても平気?俺がレディたちに囲まれて、触れられたりするのに妬いたりはしてくれないのかい?」
今の真斗はまさにその嫉妬心から不機嫌になっているのにわざと言わせようとレンは尋ねた。
「………。」
真斗はそれにも答えようとせず、レンのことをチラと見てまたテレビに視線を向ける。
「これにも答えてくれないのかい…」
だんまりを決め込む真斗にレンは少し困惑の表情を浮かべる。