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□かぐや姫*
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むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
とてもマイペースなおじいさんと世話焼きで心配性なおばあさんは仲良く暮らしていました。


そんなある日。
おじいさんは筍を掘りに竹藪へ出かけて行きました。


「おっいし〜おっいし〜筍さん♪筍さんは〜どこですか〜♪」


鼻歌混じりに竹藪を歩くおじいさんは地面に埋まる筍を探していました。
すると少し先に強い光を放つ竹を見つけました。


「あれ〜?どうしてあの竹だけ光ってるんでしょう…?」


疑問に感じたおじいさんはそっとその竹へと近づいてみました。
すると段々とその光は増していき、目を開けていられないほどの強いものになってしまいました。


「わっ!眩しいっ!!」


おじいさんはその光に耐えきれず目を押さえようと眼鏡を外してしまいました。



一方おばあさん。
残されたおばあさんはおじいさんの行方を気にしつつ洗濯物を干していました。


「那月のやつ…大丈夫かよ…この間は川で釣りするって言ってたのにみんな手づかみで捕まえてくるし…今度は何をしでかすか…」


心配を口にしつつ全ての洗濯物を干し終えたおばあさんは洗濯カゴを抱えて家に戻ろうとしました。
そのとき、竹藪から大きな音が響いてきました。


「な、なんだ!?ま…まさか…!!」


おばあさんは嫌な予感がして急いでカゴを置いて竹藪へと向かいました。



「うおぉぉぉおぉぉお!!!!!」


地響きと共に勇ましい雄叫びをあげる人物に冷や汗をかきつつおばあさんは駆け寄りました。


「砂月ー!!!」


そう、おじいさんは眼鏡を外してしまうととても狂暴で手に負えなくなってしまうのです。
それを分かっていたおばあさんは足元に目を凝らし、おじいさんの眼鏡を探しました。


「眼鏡…アイツの眼鏡…あ、あった!!!!」


「しゃぁあぁあぁあー!!!!」


それは豹変したおじいさんがどんどんなぎ倒していく竹の辺りに落ちていました。
急いでおばあさんはそれを拾い、おじいさんの方へと向かっていきました。


「那月ー!!!もうやめろー!!


おばあさんの声に一度動きを止めたおじいさんに急いで眼鏡をかけさせました。
するとおじいさんが纏っていた黒いオーラは消え去り、いつものおじいさんに戻りました。


「…あれ、翔ちゃん!どうしてここに?あ、筍さんが待ちきれなかったんですか?もう、翔ちゃんは食いしん坊だなぁ〜」


「…お…まえ…なぁ…」


「あ、翔ちゃん翔ちゃん!あそこに変わった竹さんがいたんですよ〜。」


「…はぁ。…変わった竹…?」


先ほどの惨事を知らぬおじいさんはのんびりとおばあさんに言いました。
その様子に毎度のことながら溜め息をつくおばあさんでしたが、おじいさんの指差す竹に目を向けました。


「…ホントだ…何か光ってるぞ。」


「何があるんでしょう…?」


ゆっくりと2人は近づいていき光る竹を眺めました。


「誰か入ってるんでしょうか?…コンコン、入ってますか〜?」


「トイレじゃねぇんだからノックしたって誰も返事しねぇよ。」


「じゃあ、割ってみましょう!」


「やめとけって。なんかヤバいもん出てきたら困んだろ?」


「そぉれっ!」


「わっ!バカ、やめろ!!!」


おばあさんの制止も虚しく、斧を振りかぶりおじいさんは竹を真っ二つに割ってしまいました。
すると光は先ほどより強くなり、2人は目を瞑りました。


「眩しっ!!」


しばらくして光が収まり、2人はゆっくりと目を開きました。
割られた竹の断面を見てみるとそこにはなんと小さな小さな赤ん坊が入っていました。


「わぁあ!赤ちゃんです〜」


「な、なんでこん中に赤ん坊が…!!」


まさか竹の中に赤ん坊が入っていたとは思わなかった2人はとても驚きました。


「翔ちゃん、とっても可愛いですよ〜」


「…まぁな…けど、何で竹の中から出てくるんだ?」


「さぁ…どうしてでしょう…」


2人は首を傾げつつその赤ん坊を見つめていましたが、おじいさんはそっとその赤ん坊を抱き上げました。


「わぁ〜可愛いです〜!翔ちゃんも見て下さい!」


「お、おい!勝手に抱っこしたりして平気なのかよ?泣いたりすんじゃねぇの?」


そう心配しつつおばあさんは赤ん坊をじっと見つめました。
うっすらと生えている髪は濃紺で、色白の可愛い男の子でした。


「翔ちゃん。この子、僕たちで育てましょうよ?」


「えー!…そう言っても…」


「じゃあ、翔ちゃんはこの子を放っておけるんですか?」


そう詰め寄るおじいさんに、おばあさんは頭を抱えたい気持ちになりました。
育てると言っても、実際面倒をみるのは絶対自分だし、おじいさんは放っておくと何をしでかすか分からない人なのです。
手の掛かる人間はおじいさんだけで十分だ!と思いつつ、明らかに身寄りのないこの赤ん坊を放っておくことも出来ず、おばあさんは小さく溜め息をつきました。



「…わぁったよ…家で面倒みようぜ…」


「え、良いんですか?」


「但し、お前もちゃんと手伝えよ!!」


「はい、もちろんです!!わぁ、嬉しいな〜♪良かったですね、赤ちゃん♪」


そう嬉しそうに赤ん坊を抱くおじいさんを見て、おばあさんは再び溜め息をつきつつ、新たな家族が増えることに笑みが溢れました。



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