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□アイツが俺を構う訳*※
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この男―神宮寺レン。
寮の同室でライバル的存在。
遥か昔、幼い頃。
財閥のパーティーに参加し、大人たちに囲まれる退屈な場所でコイツは俺を外へと連れ出し、色々なことを教えてくれた。
コイツが見せるもの全てが新鮮だった俺は、色々教えてくれるコイツを実の兄のように慕っていた。
しかし、ある時アイツは俺を突き放すようになった。
兄のように慕っていたアイツに冷たくされた幼い頃の俺の心は大きな痛みを感じ、ショックを受けたのを今でも覚えている。
それから、俺はアイツのことを忘れようと心に誓い日々を過ごした。
そうして成長した俺は、アイドルを志すようになり、この早乙女学園へと入学した。
全寮制のこの学園では2人で1部屋が割り当てられている。
どんな奴なのかと思っていたところに…
「久しぶり。ずいぶんと大きくなったね、聖川のお坊っちゃん。」
コイツがやってきた。
運命のイタズラか、俺はこの男と1年同じ部屋に暮らすことになってしまったのだ。
突然突き放されたこともあるが、家のことを背負わされず、自由に動けるコイツが憎かった。
逆にアイツも家のことがあるにも関わらず、アイドルを志す俺が憎かったようだ。
そのせいか、学園にいるときも、寮にいるときも、何かと俺に突っかかってきて色々と言ってくる。
嫌いなら視界に入らぬようにすれば良い。
憎いなら俺に構わなければ良い。
俺がそうしようと思っていても、アイツは一方的に俺に絡んでくる。
それを鬱陶しく思っていたはずが、いつの間にかそれが当たり前になり、アイツの存在が気になるようになっていた。
これがいわゆる…恋心なのかは分からない。
同性な上に、憎かったはずの神宮寺レンだぞ?
しかし、アイツが学園で女生徒たちとヘラヘラと笑っているところを目撃したり、妙に帰りが遅かったりするのを思うと胸の奥がチリチリと焼けるような痛みを感じる。
これを恋心と呼ばずして、何と形容するのだろうか?
俺には未だ分からない。
そのことを毎日考えては溜め息をつく。
そして心を落ち着かせようと筆を取るのに、アイツの声が聞こえると心臓が飛び跳ね心がざわつく。
今もその状況なのだ。