SS1中身
□ルイくんお誕生日企画
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(……少し早く来すぎましたかね…)
稽古場のドアを開け、誰も来ていないのを見ると、ルイは溜め息をついて荷物をいつもの場所に下ろした。
今朝は休日だということもあってか、電車は思っていたよりも空いていて、ホームも混んでいなかった為、予定より少し早く着いてしまった。
チラリと時計を見ると、時刻は午前9時45分をまわろうとしているところだった。
(……ま、こうしていても仕方ありません。予定は10時ですし、先に1人で練習していた方が良いですね)
そう判断し立ち上がると、その矢先、マナーモードにしていた携帯がポケットの中で、小さく震え出した。
「……電話…?アトムくんでしょうか…」
電車に間に合わなかった!とかいう報告を度々送ってくる彼の顔を想像しながら、ポケットから携帯を取り出すと、その相手は予想だにしていなかった人物だった。
「……マネージャー?…朝から、何かあったんでしょうか…」
今までマネージャーから来た連絡は悪いものが多かった。
嫌な予感を感じながらも、とりあえず平静を装って通話ボタンを押して耳にあてる。
「はい、ルイです」
「あ、もしもしルイくん?! ごめん、あの、今どこに居るかな?!」
「…え?稽古場ですが…」
「丁度良かった…!ごめん、今すぐ屋上に来てくれるっ?」
珍しく取り乱したマネージャーの様子は尋常ではなく、ルイは眉を寄せた。
「それは構いませんが…、一体どうしたんです?」
「それが…」
「あ、もしもし、ルイくん?!」
「アールくんまで…。何かあったんですか?」
恐らくマネージャーから携帯を借りたのだろう。今度は鮮明にアールくんの慌てた声が響いた。
「そ、それがね、アトムくんとエルが今ケンカしてて…」
『何だと、エル?! もっかい今の言ってみろよ!』
『やだよ。アトムくん、聞き取れなかったなんて、もう歳なんじゃないの〜?』
『んだと…?! そういうエルこそ、お前っ――』
「聞こえた…?僕も止めようとはしてるんだけど、あの二人だから一回火が点くと止まらなくて……だからルイくんにも止めるの手伝って欲しくて…」
「…分かりました。今から向かうので、少し待っていて下さい」
そう言って通話を終えると、ポケットに携帯をしまい、ルイは早々に稽古場を飛び出した。