SS1中身

□Star 輪舞曲
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『♪〜♪♪〜美しすぎる 天の川で奏でるよ Star Symphony〜♪』



「……あ。MG#4だ…」


学校帰りの夕暮れ時。
茜色に染まりつつある街は、家路なのか塾なのか時計を気にしながら歩く学生や、遊びからの帰り道らしき野球少年、また誰かと電話口で口論をしながら足早に歩いていく男性やら、急ぎ足の人達の姿がひっきりなしに行き交っていた。

そんな中、ひとつのビルの大モニターに、ふと目を奪われた、高校生らしい制服を着た少女が一人。

自然と足を止め、モニターに映し出される新人アイドルたちを目で追う。


(確か、音二郎さんが気にしてたっけ…。)


彼女の脳裏に普段は日本舞踊ばかりの彼が嬉々として話していた姿が思い浮かんだ。「新人だけど、侮れないスゴい逸材だ」と称賛していた姿は、少し新鮮なものだった。


(…確かに、こうしてじっくり見ていると、新人とは思えないほどメンバー4人の息もピッタリだし、ダンスも歌もみんな上手……)


――さて。そんな彼女の姿は、はたから見ると、どう見ても「アイドル好きの女子」です。花より団子派の彼女が気づいたら、抗議するでしょうか。

しかしそんなこととは露知らず、モニターに釘付けの彼女。彼女の背後に、人影が揺らめいたのさえ気付きません。



『本日いよいよ初のベストアルバム発売!MARGINAL#4 Star Cluster――』



「へぇ〜…!今日アルバム発売なんだ…」


画面に表示された日付と声が、本日発売の旨を伝える。


「……ちょっと、CDショップに寄って帰ろうかな…」

「ノー!いけません、娘サンっ」


音二郎さんの絶賛する彼らがどのような歌を歌っているのか、少し興味があった。

そんな彼女が独り言を呟くと同時に、彼女の目の前に、眼鏡を掛けた外人が現れた。


「貴女の趣味を邪魔するなどという不粋なマネはしませんが、貴女は他に大事な事をお忘れではないですか?」


突然目の前に現れた外人に懇願の眼差しで見詰められ、彼女はその気迫に押されて数歩後退った。


「八雲先生…」


彼は、彼女の学校で英語科の教師をしている外国人だ。――外国人、と言っても、彼は日本をこよなく愛している為、日本人より日本語や日本文化には詳しく、英語も日本語もぺらぺらの上、その優しい性格から、生徒たちからの人気も信頼も厚いのだ。
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