にゃんにゃんの日記念

□にゃんにゃんの日記念
1ページ/2ページ




「…あれ。まだルイしか来てないなんて珍しいな」

いつもの様に稽古場に足を踏み入れると、いつもは自分よりも先に来ているはずのエルとアールの姿はなく、ルイだけが1人上着を脱いでいるところだった。

「あぁ、アトムくん。おはようございます」

自分の姿に気がつくと、ルイは微かに笑んでから首を傾げた。

「…そうですね。いつもなら、僕よりも先に来ていることが多い二人なのですが……」

「……風邪ひいたとか?」

俺がそう零すと、ルイはまさかと笑った。

「あの二人がですか?…アトムくん、本当にそう思ってます?」

「……いや、正直ありえねー…」

風邪とは無縁そうなあいつらの顔が目に浮かび、自分で言っておきながら小さく笑った。

「なら大丈夫ですよ。エルくんもアールくんも、無理をして体調を崩すなんてことはしないでしょうし」

「ルイじゃねーしな?」

「……ぅ。その節は、すみませんでした」

すぐに張さんがマネージャーだった時に体調を崩したことだと気付いたらしく、途端に渋い表情になる。

「あぁ、冗談だって!ま、あの時はマネージャーをどうするとかでストレスだって溜まってたんだろ?仕方ねぇんじゃね?俺たち三馬鹿は丈夫だからともかくとしてよ…」

「だ〜れ〜が〜、馬鹿なのっ?」

「…え?うぁっ!」

不意に後ろから飛びつかれ、前のめりに倒れかけるが何とか踏みとどまる。

「おはよ、ルイくん!」

「えぇ。おはようございます、エルくん」

――恐らく、俺の後ろからエルが近付いて来ていたのを知っていたのだろう。ルイは特に驚いた様子もなく挨拶を返した。

「…それより、アトムくん。さっきルイくん以外は馬鹿だって聞こえた気がするんだけど〜」

俺から離れ、不満げに俺の方をジトッと見据えながらエルは口を尖らせた。

「事実だから仕方ねぇだろ」

「え〜…。ひっどいな〜、人のことを馬鹿馬鹿、って。――………俺は適当に力抜いてるだけなんだけどさ〜…ふふっ」

「……ん?何か言ったか、エル?」

語尾の小さな呟きは聞こえなかったようで、アトムくんは首を傾げたが、俺はただ笑みを返した。

「うん?別に〜?……っていうか、アール〜?いつまでぐずぐずしてんの〜?」

そう言うなり稽古場の入り口まで戻ると、エルくんはそこで半分開いたドアの向こうに話し掛けた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ