にゃんにゃんの日記念
□にゃんにゃんの日記念
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「…あれ。まだルイしか来てないなんて珍しいな」
いつもの様に稽古場に足を踏み入れると、いつもは自分よりも先に来ているはずのエルとアールの姿はなく、ルイだけが1人上着を脱いでいるところだった。
「あぁ、アトムくん。おはようございます」
自分の姿に気がつくと、ルイは微かに笑んでから首を傾げた。
「…そうですね。いつもなら、僕よりも先に来ていることが多い二人なのですが……」
「……風邪ひいたとか?」
俺がそう零すと、ルイはまさかと笑った。
「あの二人がですか?…アトムくん、本当にそう思ってます?」
「……いや、正直ありえねー…」
風邪とは無縁そうなあいつらの顔が目に浮かび、自分で言っておきながら小さく笑った。
「なら大丈夫ですよ。エルくんもアールくんも、無理をして体調を崩すなんてことはしないでしょうし」
「ルイじゃねーしな?」
「……ぅ。その節は、すみませんでした」
すぐに張さんがマネージャーだった時に体調を崩したことだと気付いたらしく、途端に渋い表情になる。
「あぁ、冗談だって!ま、あの時はマネージャーをどうするとかでストレスだって溜まってたんだろ?仕方ねぇんじゃね?俺たち三馬鹿は丈夫だからともかくとしてよ…」
「だ〜れ〜が〜、馬鹿なのっ?」
「…え?うぁっ!」
不意に後ろから飛びつかれ、前のめりに倒れかけるが何とか踏みとどまる。
「おはよ、ルイくん!」
「えぇ。おはようございます、エルくん」
――恐らく、俺の後ろからエルが近付いて来ていたのを知っていたのだろう。ルイは特に驚いた様子もなく挨拶を返した。
「…それより、アトムくん。さっきルイくん以外は馬鹿だって聞こえた気がするんだけど〜」
俺から離れ、不満げに俺の方をジトッと見据えながらエルは口を尖らせた。
「事実だから仕方ねぇだろ」
「え〜…。ひっどいな〜、人のことを馬鹿馬鹿、って。――………俺は適当に力抜いてるだけなんだけどさ〜…ふふっ」
「……ん?何か言ったか、エル?」
語尾の小さな呟きは聞こえなかったようで、アトムくんは首を傾げたが、俺はただ笑みを返した。
「うん?別に〜?……っていうか、アール〜?いつまでぐずぐずしてんの〜?」
そう言うなり稽古場の入り口まで戻ると、エルくんはそこで半分開いたドアの向こうに話し掛けた。