書評・熱闘篇

□『僕の見た「大日本帝国」』
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 当時の『大日本帝国』の領土は今どうなっているのだろう?という、著者の素直な疑問について、実際に現地に赴き、現状と課題などを取り上げた本。今の所、今年一番影響を受けた本です。
 著者は非常にバランスの良い人物のようで、植民地支配地域に対して変に鬱屈することもなく、また当時の戦争を賛美するわけでもなく、神社を中心に普通に取材している。2冊の本は内容が多岐に渡るので、感想などを記すのに骨が折れるのだが、台湾などのように植民地支配時の建築物を使い続ける国もあれば、韓国や中国のように徹底的に破壊してしまう国もある。樺太に神社の鳥居だけが残っていれば、神社跡地をその国の愛国的なシンボルの場所にしたりする国もある。日本語がしゃべることができるのに、取材に日本語で答えることを拒否する人もいれば、パラオのように現地語の中に日本語の単語が混ざり、日本の国旗をまねて国旗をつくった国もある。
 今自分が使っている歴史の教科書を見ても、このようなことは記されていない。またメディアなどから伝わってくるアジア諸国の歴史観と、実際に取材した現地の人の話しも微妙に温度差があるような気がする。『正しい価値観に基づく歴史認識』と言葉で言ってしまえば簡単だが、それは一方の国から訴えかけるだけではダメなのではないか。正しい歴史認識を考えるのなら『日本のあしあと』が残っている今のうちにしっかりと把握する必要があるのではないか。

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