アムネシア(短夢)
□俺がキミに願うこと
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現実世界から自分の世界に入り込める入口
それがカメラだと思う。
現実世界から自分の気に入ったものだけを切り取る作業
何気ない風景の中に埋もれてしまうような瞬間を、俺はカメラを使って切り取ってゆく。
それを自分の世界に並べて、飾って・・・・・。
「消えてしまう瞬間を自分の世界に留めておく方法ですかね。」
俺は雑誌の取材にこう答えた。
『フォトグラファー ウキョウにとって、写真って何ですか?』
簡単なようで答えにくい質問だ。
普段撮る側の俺が撮られることなんてほとんどないと言ってもいい。
彼女ともう一度笑いあいたい。
そんな願いの為に、何度も世界をめぐる俺が記録に残っても仕方がないと思う。
彼女がいない世界になんて用事はないし、彼女がいたとしても俺がいない。
俺の姿なんて誰も振りかえらないんだ。
『ウキョウ』
俺の名前を呼ぶ彼女の声が好きだ。
あの温かな手も、柔らかな体も・・・・・。
この世界の君は誰のものになるのだろう。
今度こそ一緒に笑いあいたい。
こんな簡単な願いが叶わない。
何度願っても・・・・・
何度繰り返しても・・・・・