アムネシア(短夢)
□夕日に晒された想い
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馬鹿みたい。
目の前で落ち込んでいる君を見て、そう思った。
馬鹿みたい。
落ち込んでいることを悟られないように頑張っている君を見てそう思った。
平静を装っているつもりなんだろうけれど、ばればれなんだ。
幼馴染で歳上で、初恋の相手でもある大好きな彼女についに彼氏が出来たらしい。
目の前で落ち込んでいる彼の声は、分かりやすいくらいに落胆の色を帯びていた。
「そっか」
大丈夫?なんて聞かないよ。
大丈夫じゃないのに、大丈夫としか答えられないと思うから。
仕方がないよとも言わないよ。
だって仕方がないなんて思えないから。
元気出しなよなんて言わないよ。
無理にでも立っている君を余計に傷つけてしまいそうだから。
そっかに込められたたくさんの想いに君は気がついてくれるのかな?
近くにこんなに自分のことを想っていてくれる人がいるのに、他に男を作った残酷で、可愛らしく、馬鹿な彼女。
想い人に彼氏が出来ても、未だに諦めることも忘れてしまうこともできない不器用で馬鹿な君。
そんな君がどうしようもなく好きな私。
ここには馬鹿しかいないね。
それでも私は思うんだよ。
彼女が君を好きにならなくてよかったって。
君が一途で良かったって。
実ることが無くても、君を好きだと思えて良かったって。
馬鹿みたい。
君を見ていてそう思った。
本当に馬鹿みたい。
〜完〜