アムネシア(短夢)
□記憶の片隅に
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“3ヶ月の間、僕と付き合わない?”
彼にそう言われた時、本当にびっくりした。
大学一のモテ男
そんな彼がまさか私に声をかけるなんて思ってもいなかった。
かく言う私も彼に想いを寄せる一人だったりしたわけで。
でも、ファンクラブに入ってしまえる程オープンにはなれなかった。
ファンの一言で言い表せるほど簡単な想いでは無かったし、真剣に彼のことを見ていたからこそ、周りに私の気持ちがばれてしまうのが嫌だった。
私の小さなプライドがどうしてもそれをためらわせたんだ。
そんな私に彼からの申し出が嬉しくて、思わずうなずいたのがきっかけで、その日から彼との付き合いが始まった。
相変わらず彼の周りにはファンクラブの女の子が溢れていたし、その子たちからの嫌がらせもあった。
それでも彼はとても優しくて、それがとても嬉しかった。
嫌がらせなんて些細なことに思えたくらいに。
一緒に行った映画の半券
私の部屋に置いたお揃いのマグカップ
ピクニックに行った公園で見つけた花で作った押し花
そんな思い出の欠片を見ては、ニヤけてしまう頬
私の気持ちを知っていた友人は一緒になって喜んでくれたし、『なんだかんだ言っても仲良しカップルしてるじゃん』なんて言ってくれた。
こんな幸せが続くと思っていた私は、本当に幸せだったんだと思う。