アムネシア(短夢)

□背中を追って
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この恋の終着地点はどこだろう。

ふわふわして、ドキドキして、きらきらしていたはずの恋

憧れて、追いかけ続けて、大切に育ててきたはずのこの気持ちを持て余すようになったのはいつからだったんだろうか。

自分でも気がつかないうちに、彼を目で追うようになっていた。
胸の奥から押し寄せるような恋しさ
胸がつかえて、息も出来なくなりそうなこの想いがはじまる前まで巻き戻せるなら。

もし選べるならば
私はもう一度彼を好きになるんだろうか・・・・。


夕日に照らされた街路樹が道に暗い影を落とす。
何もかもを真っ赤に染めるその夕日が、私には悲しく目に映るんだ。

彼の隣を歩く可愛らしい彼女。
ふわふわした印象に、可愛らしい笑顔。
守ってあげたくなるような・・・・・。

こみ上げる恋しさに切なさが混じりあうこの気持ち

“幼馴染”だと彼は言う。
妹みたいなものだって。

私の告白に、笑いながらOKしてくれた彼。
私のことをそっと抱きしめてくれた彼。

そんな彼を信じていれば良いだけなのに・・・。
どうしてこんなに苦しいんだろう。

彼とあの子の後ろ姿を見つめながら、決して追いつかないようにゆっくりと歩く。

時折、愛おしそうにあの子の頭を撫でる彼のシルエットが私の心をえぐってゆく。

ツンっと鼻の奥が痛くなって、目頭が熱くなる。



痛い

苦しい

切ない

淋しい


気がつかなければいいのに・・・・


私に“好き”って言ってくれたことが無いことも

あの子を見る瞳がとても優しいことも

あの子が他の男の子と一緒にいると切なそうな顔をすることも

友達に私を“彼女”として紹介しないことも


気がつかなければよかった・・・・・


あなたの背中がひどく遠く感じるのは、本当に物理的な距離だけのせいなんだろうか

溢れだしそうな気持ちが頬に伝って零れ落ちてゆく

噛みしめた唇から漏れ出たのは、嗚咽まじりの“トーマ”の一言


ねぇ、待って
私を置いていかないで


はじまる前に巻き戻せるなら、私はこの恋を選ばない。

〜完〜

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