夢・短

□恋愛の終止符
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彼と別れた。

元気が無いと心配してくれた母にそう告げると、いつまでも変わらない体温が私を包み込んだ。

『そうだったの・・・・・。』

私の背中をさすりながら、母の優しい声に耳を傾ける。

「私は泣かなかったよ・・・・・。彼は泣いてたけど・・・・・。」

『うん。』

「怒らなかったし、責めなかった・・・・・。」

『そうなの』

母の柔らかな匂いがする。

「すごく悩んだんだと思うの。すごく悩んで、悩んで・・・・。やっと言ったことなんだと思うんだ・・・・・。そういう優しいところ好きだったの・・・・・。
黙っていることだってできたはずなのに・・・・電話とかメールで終わらせる事だってできたはずなのに・・・・・・わざわざ休みとって・・・・逢いに来て・・・・・直接言ってくれた・・・・・・。
誠実で素敵な人だったでしょ?」

『うん。素敵な人だった。あんたの見る目は間違ってなかったと思うよ。』

あの時出せなかった涙が、ポロポロと零れ落ちる。

母のシャツにしみこんで、少し冷たい。

小さくて、柔らかくて、優しい匂いに安心したせいなのか、あの時に言えなかった言葉も一緒に零れ落ちていくようだった。

『偉かったね。』

母のその一言で、やっと終わったような気がした。



その後、仕事から帰ってきた父の姿は本当に面白かった。


リビングで母にすがりながら泣きじゃくる私に、おろおろしながらも声をかける。


「どこか痛いのか?」

「会社でいじめられたのか?」

「病院行くか?」

「よし!お父さんがなんとかしてやるからな!」


小学生じゃないんだからと呆れる母と一緒に笑ってしまったけれど、オロオロしている姿が彼にそっくりだと気がついて、また涙が止まらなかった。

〜完〜
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