アムネシア(短夢)
□俺がキミに願うこと
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部屋に帰ると、すぐに写真の整理にとりかかる。
この世界で撮ってきたものを何枚も何枚も・・・・。
ただ黙々と選別されてゆく写真の中に、俺にしては珍しい人物写真が混じりだす。
「・・・・・あ・・・・・。」
何枚も何枚も出てくる写真
その写真に必ず移っているのは彼女だ。
この世界で撮ったものではない写真
シンの隣で無邪気に笑う彼女
イッキをはにかんだような表情で見上げる彼女
トーマの隣で寝ている彼女
ケントの腕に抱きついている彼女
俺のものではない彼女たちが俺じゃない男に笑いかける写真
あぁ・・・・・息ができない・・・・・。
未だに色あせることのない恋心が胸にせり上がってきて、胸がつまる。
醜い嫉妬心と身を焼きつくすような慕情の念
ふと一枚の写真が目に止まる。
真っ直ぐに俺を見つめる彼女の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
楽しそうに細められた目
くっと上がった口角
青空をバックにした彼女しか映ってない写真